豪モナシュ大学(Monash University)は1月30日、同大学の研究者チームが、微生物が大気中の一酸化炭素(CO)をエネルギー源として消費し、大気の浄化に役立っている仕組みを原子レベルで明らかにしたことを発表した。この研究の成果をまとめた論文は学術誌Nature Chemical Biologyに掲載されている。
人体に有害な気体であるCOは大気中に年間20億トン以上放出されており、このうち2億5000万トンが微生物により消費されている。これらの微生物はCOデヒドロゲナーゼと呼ばれる特殊な酵素を用いて、COからエネルギーを抽出している。
論文の共同筆頭著者でモナシュ大学のMonash Biomedicine Discovery Institute(BDI)とメルボルン大学(University of Melbourne)のグリンター研究所(Grinter lab)に所属するアシュレイ・クロップ(Ashleigh Kropp)氏は、この研究は、この酵素が大気中のCOを抽出し、細胞の動力源となる仕組みを初めて示したと語った。
クロップ氏は「この酵素は土壌中や水中に存在する何兆もの微生物に使用されています。これらの微生物は自らの生存のためにCOを消費しますが、その過程で意図せず私たちを助けているのです」と説明した。
今回の発見は、COの削減や測定に直接利用できるものではないが、大気の調節の仕組みや将来の変化への反応に関する理解を深めることに役立つ。同氏は、「微生物は私たちが呼吸する酸素の半分を生成し、COのようなさまざまな汚染物質を解毒しています。微生物が私たちの生存を支えている仕組みをよりよく理解することは非常に重要です」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部