ニュージーランドのカンタベリー大学(University of Canterbury)は3月24日、気候変動下の持続可能な河川管理において、大きな堤防を建設するよりも河川に移動の余地を与えることが、人と自然の双方に大きな恩恵をもたらす可能性があるとする新たな研究を発表した。研究成果は学術誌Nature Waterに掲載された。
研究チームは、従来の堤防や護岸による制御重視の洪水管理では、洪水リスクの高まりに対応しきれないと指摘する。一方で、河川に自由な動きを許すスペースを与えることが、気候変動の中で人間の居住地をより安全に保つとともに、淡水の生態系の維持にも役立つとしている。
論文の筆頭著者である博士課程学生のクリスティーナ・マッケイブ(Christina McCabe)氏は、可変性は氾濫原の河川の特徴でありダイナミックな生態系を理解することが重要だと語る。例えば、準絶滅危惧種のチャオビチドリは、移動スペースがある河川では砂利が露出している場所も営巣地とすることができるという。
ジョナサン・トンキン(Jonathan Tonkin)准教授は「ダイナミックな河川は、希少種の重要な生息地を回復させ、生物多様性を向上させます。河川を管理すべき脅威としてではなく、保護し回復させるべきライフラインとして捉えることが重要です。この研究成果は政策立案者や河川管理者がより持続可能な選択肢を模索するうえで重要な示唆を与えています」と述べる。
本研究はニュージーランド王立協会のラザフォード・ディスカバリー・フェローシップなどの支援を受け行われた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部