オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は4月3日、人工知能(AI)を活用し、少ない資源で高タンパクな収穫が可能な作物を選定・栽培・製品化し、さらに持続可能で個別化された食品の開発を推進する取り組みについて発表した。
CSIROはダイズ(写真)のような植物性タンパク質作物の改良に取り組んでいる
世界的な人口増加とタンパク質需要の高まりにより、農業の生産性向上と環境負荷低減の両立が急務となっている。こうした中で、AIは植物性タンパク質作物に関する膨大な農業ビッグデータを解析し、より効率的かつ環境負荷の少ない農業と持続可能な食料システムの構築を後押ししている。
植物性タンパク質を豊富に含む作物の代表格として、ダイズやヒヨコマメが挙げられる。これらに対し、AIは土壌状態や気象パターンを予測し、水や肥料の使用量を最適化することで、収量と品質の向上を支援する。また、害虫の早期検知や気候適応性の高い品種の特定も可能となり、気候変動への対応力も高まる。
AIは新しい持続可能な作物をターゲットにするのに役立つ
(出典:いずれもCSIRO)
さらに、CSIROが開発を進めるMAGDA++プラットフォームでは、AIを用いて植物性タンパク質の特性や加工時の挙動をシミュレーションし、味や食感、栄養価の調整を可能にしている。これにより、動物性タンパク質に近い品質の製品開発が加速している。
AIはまた、個人の健康目標に応じたタンパク質ブレンドの設計にも活用されており、パーソナライズされた食品開発を支援する。加えて、サプライチェーン全体の効率化や食品廃棄物の削減といった観点でも、AIは食品分野の持続可能性向上に寄与している。
今後は、タンパク質の乳化性や熱安定性といった機能特性の向上にも貢献し、より多様な食品への応用が見込まれている。AIと農業・食品加工技術の融合は、グローバルな食料問題の解決に向けた大きな一歩となる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部