ニュージーランドのオークランド大学は4月29日、ニュージーランド固有種であるヘクターズイルカとマウイイルカの保護に向けた研究プロジェクトを開始したと発表した。
ヘクターズイルカとマウイイルカはニュージーランドにのみ生息する固有種であり、とりわけマウイイルカはわずか48頭しか確認されていない。海洋科学者のロシェル・コンスタンチン(Rochelle Constantine)教授は、「これらのイルカを守るためには、今すぐ対策が必要です」と強調している。
現在の保護活動は主に水面上での観察データに依存しているが、研究チームはより詳細なデータ収集を目的に、マルチセンサー・デジタル・アーカイブ・タグ(DTAG)を用いた観測を開始した。DTAGはシリコン製吸盤でイルカに装着でき、水中での行動、音響、移動パターンを詳細に把握できる。これにより、イルカがどの程度潜水し、どの範囲を移動しているのか、餌探しの成功率などが明らかになる。
初期調査の結果、イルカが従来考えられていたよりも沖合へ移動し、漁場にまで進出していることが確認された。しかし、個体数が特に少ない生息地でのデータが不足しているため、さらなる調査が求められている。同教授は「ニュージーランドでは高度な海洋研究への投資が不足している状況ですが、これらのツールは野生動物保護に不可欠です。海洋が豊かであれば、人々の生活も豊かになります」と、その重要性を強調した。
このプロジェクトは、オークランド大学のアピールプログラムを通じて集められた寄付金により実施されている。特に、イルカタグプロジェクトは人気が高く、寄付者からの支持を受け、今後も支援が続く見通しだ。2024年には744件の寄付があり、そのうち138件は新設された専用ウェブサイトを通じて寄せられた。
同教授は「私たちがこれらのイルカを守らなければ、誰も守ってくれません」と呼びかけ、イルカ保護活動へのさらなる支援を訴えている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部