オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学(RMIT)は5月8日、研究者らが空気中の水分を吸収し、太陽光で飲料水として放出する木材ベースのスポンジ状デバイスを開発したと発表した。研究成果は学術誌Journal of Cleaner Productionに掲載された。
本装置は、中国の浙江農林大学を含む5つの中国機関との共同研究により開発された。使用された素材は精製されたバルサ材をベースとする木材複合材で、多孔質構造と吸湿性を活かし、大気中の水分を吸収・放出できる。太陽光のみで作動する構造により、外部エネルギーを必要とせず、30~90%の湿度、5~55℃の環境下で安定した性能を示す。
実験では、相対湿度90%で素材1gあたり約2mLの水を吸収し、太陽光の照射により10時間以内にほぼすべてを放出した。屋外試験では、夜間に1gあたり2.5mLを回収し、日中に94%の水分を放出するなど、高い効率を実証している。乾燥した湿度30%でも0.6mLの吸収が確認された。
研究を主導したRMITの材料科学者で環境エンジニアのデレク・ハオ(Derek Hao)博士は、「本技術はオフグリッドでの持続可能な水供給を可能にするもので、特に自然災害後などの緊急時に有用です」と述べた。
同博士によると、装置はマイナス20℃の冷凍保存後も機能を維持し、10回以上の吸収・放出サイクルにおいても効率の低下は12%未満にとどまった。今後は、モジュール化による大型展開や、IoTセンサーを用いた自動制御システムの統合、産業界との連携による現地実証や量産化を目指している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部