2025年06月
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アルツハイマーなどの迅速診断携帯デバイス開発へ NZカンタベリー大学

ニュージーランドのカンタベリー大学(University of Canterbury)は5月22日、アルツハイマー病などの早期診断を迅速かつ安価に行える携帯型プラットフォームの開発を進めていると発表した。

カンタベリー大学は、マイクロ流体技術と電気化学センサーを組み合わせた新たな診断デバイスの開発を進めている。この技術により、複雑な機器や高価な実験設備を用いずに、体液中の特定物質を現場で素早く検出し、無線でデータを送信することが可能となる。

本研究を主導するレンウィック・ドブソン(Renwick Dobson)教授は「アルツハイマー病の兆候検出、路上薬物検査、ワインの発酵管理など、正確な結果を迅速に届けることを目指しています」と述べている。産業面でも期待は大きく、同大学は本技術によってニュージーランド企業に年間最大3億7100万NZドルの収益効果をもたらす可能性があると試算している。

プロジェクトには、全国の工学、化学、生物学の専門家が参画し、現場で使える実用的なソリューションの開発を進めている。また、利用者の意見を反映させるべく、医療従事者や産業関係者との共同設計が行われている。

チームはさらに、病気や薬物、ワインの風味特性に関連するごく微量の化合物を識別するカスタムバイオレセプターの設計にも取り組んでいる。加えて、13人の若手研究者が最新のバイオセンサーおよびマイクロ流体技術について実地指導を受けており、将来の技術基盤の強化も図っている。

同教授は「これは単なる技術開発ではなく、ニュージーランドがこの分野でリーダーシップを維持するための能力を構築する取り組みでもあります」と研究の意義を強調している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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