2025年06月
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ミズアブ幼虫で有機廃棄物やプラスチックを資源に変換 NZカンタベリー大学

ニュージーランドのカンタベリー大学(University of Canterbury )は5月29日、同学の研究者がアメリカミズアブの幼虫を用いて再利用困難な有機廃棄物やプラスチックを分解し、高付加価値の副産物へ転換する研究を進めていると発表した。

本研究では、ミズアブの幼虫を用いたバイオコンバージョン技術の開発が進められている。研究の目的は、低品質の有機廃棄物を肥料や飼料などの有用な資源に変換し、埋立量や温室効果ガス排出を削減することである。

この研究は、同大学の地球環境学部、製品デザイン学部、生体分子相互作用センター、環境科学研究所(ESR)の連携で行われており、従来は再利用が困難とされていたバイオソリッド、食品加工廃棄物、病原体や重金属を含む廃棄物にも対象を広げている。

グループの一員である同大学のマリア・グティエレス・ヒネス(Maria Gutierrez Gines)博士は、「ミズアブの幼虫は、こうした廃棄物を迅速かつ安全に分解でき、処理後にはフラスと呼ばれる栄養豊富な残渣を残します。この残渣を肥料として利用できる可能性を調べています」と説明する。さらにヒネス博士は、「ESRとの共同研究では、幼虫内の一部の細菌にプラスチックを分解する能力がある可能性も確認されました。これは誰もが扱いたがらない廃棄物を、より安全かつ経済的・環境的に有益な方法で処理する道を開く成果です」と語った。

ミズアブ成虫は餌を摂取せず水しか飲まないため、病原体を広げにくく、廃棄物処理においても衛生面での利点がある。現在、同大学ではキャンパス内に幼虫の研究コロニーを設置し、学生や研究者、製品デザイン学部との連携のもと、副産物の応用可能性を探っている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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