2025年07月
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クイーンズランド大学、PFASを選択的に除去する再利用吸着材を開発 豪CSIRO

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は6月25日、ポリフルオロアルキル化合物(PFAS)を効率的に除去する再利用可能な吸着材をクイーンズランド大学(UQ)の研究チームが開発し、CSIROが実施するON Primeプログラムの支援を通じて社会実装を進めていると発表した。

CSIROのON Primeプログラムの支援でPFAS汚染に対する世界的な対策を推進するUQ AIBNの研究者ら
(出典:CSIRO)

UQオーストラリアバイオエンジニアリング・ナノテクノロジー研究所(AIBN)のチェン・チャン(Cheng Zhang)博士らの研究チームは、PFASを選択的に除去できるポリマー系吸着材を開発した。この素材は、世界中の埋立地浸出水や下水汚泥、廃水に含まれるPFASを対象に再利用可能なビーズ状の形状を有しており、従来の粉末状素材に比べて目詰まりや劣化の課題を克服している。

同博士は、米国のデュポン(DuPon)社のスピンオフ企業であるケマーズ(Chemours)社と共同でPFAS浄化研究に携わった経験がある。「米国では規制や世論の圧力が強く、PFAS問題は非常に差し迫った課題です。その現場感覚が、現実的な解決策を考える出発点になりました」と語る。

この吸着材の改良は、ON Primeプログラムを通じて大きく進展した。同チームは、研究成果を産業界にどう伝えるかという視点を学び、技術的優位性だけでなく、ユーザーのニーズに基づく価値提案を磨いた。同博士は「業界が求めているのは論文ではなく、現場で使える製品だと気づかされました」と話す。

現在は、クイーンズランド州政府が主導するイノベーション推進政策であるAdvance Queenslandイニシアチブの支援のもと、ブリスベンやゴールドコースト空港などの大規模施設を候補地にパイロット展開を予定している。並行して、大学の技術移転部門UniQuestと連携し、スタートアップの設立と投資誘致も進めている。

「研究の旅はまだ続いています。次のステップは、大規模環境での有効性を実証することです」と同博士は今後の展望を語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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