オーストラリアのシドニー大学 (University of Sydney)は9月19日、オーストラリア政府が発表する2035年までに温室効果ガス排出量を2005年比で62~70%削減する目標についてのシドニー大学の専門家らの見解を紹介した。

(出典:シドニー大学)
オーストラリア政府が掲げた新たな排出削減目標に対し、シドニー大学ネットゼロ研究所所長のディアナ・ダレッサンドロ(Deanna D'Alessandro)教授は「明確な中期目標が示されたことは大きな前進です。何もしないことのリスクはもはや遠い未来の話ではなく、今まさに目の前にあるからです。脱炭素化は気候だけでなく経済・国家安全保障そしてオーストラリアの未来を守ることにも関わります」と評価している。また「必要なのは、大胆で連携の取れた解決策、私たちの経済、環境、人々、そして地球にとって有効な解決策なのです」と強調する。
一方、工学部プロジェクトマネジメント学科博士課程に在籍し環境弁護士でもあるルイサ・F・ベドヤ・タボルダ(Luisa F. Bedoya Taborda)氏は「新目標は重要で必要な政策的前進であり、クリーンエネルギー投資は雇用を増やし、地域経済を活性化させます」と述べる。化石燃料産業の雇用が全体の約1%に過ぎず減少傾向にある一方、再生可能エネルギー分野では新たな雇用が急増していることを指摘した。
タボルダ氏はさらに、オーストラリアのジョブズ・アンド・スキルズ・オーストラリアによる報告を引用し、クリーンエネルギー経済において38種の重要職種が特定され、それらの職種の成長率は労働市場全体を上回ると説明した。クリーンエネルギー評議会の試算では、2030年までに再生可能エネルギー比率を82%に引き上げるとした場合、建設・運用・保守分野で年間約4万人規模の雇用が創出される見通しという。同氏は「オーストラリアには雇用を拡大し、クリーンな経済の中で経済成長し、深刻化する災害から地域社会を守るチャンスがあります」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部