診断・検査キット・ワクチン開発を支援...スパコンでパンデミック克服へ

AsianScientist-スーパーコンピューターは毎秒数兆回の演算を実行し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断や検査キット、ワクチンの開発を加速させ、科学者たちがパンデミックと戦うのを助けている。

約20年前になるが、アジア中の国々はコロナウイルスによって引き起こされた伝染性で致命的な伝染性疾患に悩まされていた。当時、わずか 数週間のうちに、重症急性呼吸器症候群 (SARS) の発生は国境を越え、アジア各国のつながりあう構造に大きな影響を与え、数千人が感染し、800人近くの死者が出た。

2020年初め、ヘルスケア、研究、輸送、ロジスティクスなどを含め、つながりあう構造はコロナウイルスによって再び試練に立たされた。COVID-19を引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2がアジアと世界中に広がり、ほぼすべての国に大混乱をもたらした。

今回のパンデミックへの対応は国によって異なるかもしれないが、1つの共通の真実が浮かび上がってきた。それは、適応と変革の機会を利用する国はさらに強くなる、ということだ。

世界中の科学者がCOVID-19発生の初期に素早く反応し、高性能コンピューティング (HPC) の偉大な力を利用し始めた。科学者たちはスーパーコンピューターで複雑な数理モデルを実行することにより、大量のCOVID-19データを処理し、生物学プロセスと化学プロセスをシミュレートすることができた。

これらのシミュレーションは、ウイルスの進化と人間への感染経路についての理解を深めただけでなく、ウイルスに対する介入を迅速に開発させた。アジアの機関、政府、大学がどのようにスーパーコンピューターソリューションを利用してパンデミック全体に対抗力を提供してきたのか、本記事を通じて知っていただきたい。

検査キットの開発は溢れかえる

世界保健機関(WHO)の事務局長であるテドロス・アダノム・ゲブレイエス (Tedros Adhanom Ghebreyesus) 博士は2020年3月のオンライン記者会見で、すべての国に分かりやすい助言をした。「疑わしければすべて検査せよ」

しかし、国に検査キットがなければ大々的な検査は行えない。この呼びかけに対し、韓国・ソウルに本拠を置くバイオテクノロジー企業であるSeegene社は、同社所有のスーパーコンピューターを使用してわずか数週間で検査キットを開発し、他の国が新ウイルスの最初の症例を確認する前にそれらを供給した。この検査キットはリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応 (RT-PCR) を使用しており、疑わしい患者サンプル中のウイルス遺伝子の存在を検出することができる。

実際の患者からのサンプル数は十分ではなかったが、チームは人工知能(AI)を使用してSARS-CoV-2の分子構造を分析し、ウイルスの遺伝物質と反応して高感度の検査を可能とするために必要な試薬を作り上げた。Seegene社の創設者兼CEOであるチュン・ジョングヨーン (ChunJong-yoon) 博士はCNNに対し、スーパーコンピューターがなければ、チームがそのような検査を開発するのに2~3カ月かかったであろうと語った。

ミッション:感染の検知

COVID-19の診断は、現在、臨床サンプルからウイルス遺伝物質を検出するためのゴールドスタンダードと見なされているRT-PCR検査に依存している。しかし、最初のRT-PCR検査で決定的な結果が得られない場合は、代わりにX線スキャンや胸部コンピューター断層撮影 (CT) が使用されることがある。

しかしながら、医師はCT画像の評価にかなりの時間(少なくとも15分)を費やす必要があり、医療従事者の数が足りない場合、大きなボトルネックになる。

この問題を解決するために、中国の清華大学の研究者たちはわずか数分または数秒というかなり短い時間で分析を実行できるHPC対応のAI ツールを考案した。その際に要求されたスーパーコンピューターが、中国のアリババの「ライフサイエンス用エラスティック高性能コンピューティング (E-HPC) ソリューション」である。

E-HPCには、インテル中央演算処理装置ベースの構成が4つと、Tesla P100グラフィック処理装置を追加した同様の構成が1つあり、いずれもネットワーク速度は10Gbpsから25Gbpsの範囲である。このような処理能力により、E-HPCはアルゴリズムとデータ要件に容易に対応し、AIプログラムはCTスキャンからCOVID-19の診断をピンポイントで行うことを迅速に学習することができた。

中山大学の研究者たちは、診断だけでなく、データ転送を高速化するE-HPCの機能を活用して、ウイルスの進化に関してさらに詳細な情報を得ることができた。一方、北京大学のチームは、E-HPCのリソースを利用して、分子の結合形を分析する分子ドッキング試験を迅速化させた。膨大な計算能力があることから、スーパーコンピューターは、最も脆弱なウイルスを標的とする抗体や薬剤候補の発見を進める上で価値を持つ。

従来のものとは異なり、HPCを活用するモデルは、一度に大量の異なる分子を調べることができ、ヒト細胞に侵入して感染するための鍵であるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を捕まえ、不活性化する方法をシミュレートする。

感染の連鎖を断ち切る

COVID-19の症例が最初に報告されて以降、1年もしないうちに2億5000万件近くの症例が記録され、アジアはその5分の1以上を占めている。 ウイルスの蔓延を食い止めるための鍵は、無症候性の症例を含め、感染の連鎖を追跡することである。これにより、保健当局は、潜在的保菌者と接触した人を迅速に特定し、連絡を取ることができる。

接触追跡プロセスを合理化する能力を持つスーパーコンピューターは、このような感染の鎖を断ち切る上で重要な役割を果たす。

パンデミックの初期に韓国で症例数が急増したとき、韓国科学技術研究院 (KIST) と韓国科学技術情報通信部が共同でKISTの個人伝達現象シミュレーションツールキットを開発した。このツールはHPCを活用して全国の人々の動きをシミュレートし、韓国の約5,000万人の人々の位置に関するデータを照合する。

保健当局は特定の「ノード」、つまり接触点から発生した感染を追跡し、COVID-19の疑いのある人々に検査を受けるよう通知し、あるいは自己検疫を行うよう通知し、感染の連鎖を断ち切る努力をしている。

一方、香港では、保健省が警察と協力して、スーパーコンピューターを使用して感染者間の関係を示す重大事件調査および災難支援系統 (Major Incident Investigation and Disaster Support System)を展開した。当局はこのような視覚化を通じて、症例が急増しているクラスターを容易に特定することができ、データに基づき移動制限その他の介入に関する政策決定を行えるようになった。

SARS-CoV-2の未来を覗き見る

ウイルスは蔓延するにつれて変異を蓄積し、より感染力が強く、致死的な新型ウイルスを生み出すことがある。SARS-CoV-2も同様であり、デルタ変異株と今回のオミクロン変異株は、進化した結果、元の株の少なくとも2倍の感染力を持つようになった。

新たな変異株を正確に検出し、ワクチンと治療法が新たな株にも有効であることを保証するために、科学者たちはウイルスの遺伝子構成や、宿主細胞への侵入に不可欠なタンパク質の発現など、変化するウイルスの特性を把握するために、急ピッチで作業を進めている。

米国のカーネギーメロン大学とタイのキングモンクット工科大学ラートクラバン校が協力して設立されたCMKL大学では、研究者たちはApex-Goliathスーパーコンピューターを使用してSARS-CoV-2の変異株の先を読もうとしている。Apex-Goliathは、一般的な家庭用コンピューターの約100万倍の処理速度を持ち、患者から収集したウイルスゲノムデータをふるいにかけ、変異点を特定する。

さらに、遺伝子コードに危険な変異が潜んでいる傾向が見られる場合、AIを搭載したシステムが自動的にアラートを発する。起こりうる変異や変種をこれまで以上に迅速に予測することで、医療従事者や国家当局はCOVID-19の蔓延を食い止めるために早期対応を取ることができる。

スーパーコンピューターが検知から薬剤開発まで新しいソリューションを提供するようになったため、科学者と政府はパンデミックが最終的に制御下に置かれる未来を実現しようとしている。COVID-19の影響が広範囲に及んでいるのと同様に、このウイルス性疾患に対する介入は、基礎科学と技術革新の架け橋となる学際的な取り組みから生み出されている。

(2022年05月09日)

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