魚の鱗からコラーゲン抽出、野菜は頑強な建築資材に...食品廃棄物を「奇跡」に変える取り組み

AsianScientist-創造的な技術により食品廃棄物はさまざまな価値のある製品に再利用され、果物の皮や魚の鱗(うろこ)にも新たな命が吹き込まれている。

世界では80億の人々が存在しているが2050年までにさらに20億人増えると予測されている。このため、資源を枯渇させずに、地球上のすべての人々の栄養ニーズを満たす方法が求められている。しかし、おそらく、持続可能性の高い生態系を作り上げるための答えは、生産高を上げることではなく、損失を少なくすることである。

生産されたすべての食品の約3分の1がサプライチェーンの中で失われ、世界の食品廃棄物の半分はアジアで発生する。矛盾しているようだが、アジアは食品の純輸入国であると同時に、現在も数千人が栄養不足の状態に置かれている。5歳以下の子供の20%強が発育不全であり、9%近くが削痩(さくそう)を経験し、死亡リスクは高い。

食品廃棄物は将来の食料安全保障を脅かすだけでなく、都市の汚染の大きな原因であり、ゴミの山の中で急激に増えてきている。多くの社会では、ゴミを処分する土地のスペースがますます縮小してきている。たとえば、インドでは、1人が捨てる食品の量は年50キログラムであり、そのほとんどはいっぱいになった埋立地で化学廃棄物となり、有毒ガスを発生させる。

アジアの研究者や新興企業は、食品廃棄物を有用な製品に変える新しい方法を考案し、廃棄物で溢れかえった食品システムを生き返らせようとしている。本記事ではアジアで考えられた5つの創造的な方法を紹介する。これらの方法は食品廃棄物をリサイクルして再利用し、汚染を減らしつつ、生物医学や製造などの意外な分野で価値を提供している。

やわらかい食べ物を頑丈な建築ブロックに

葉野菜や柔らかい果肉は、製造に利用できる有力な素材とには見えないかもしれない。しかし、東京大学の研究者チームは、食品廃棄物を頑丈な建設資材に変換する革新的な技術を開発した。中にはコンクリートよりも頑丈なものもある。

チームは、おがくず粉から建設資材を作るために従来から存在していたヒートプレス工法の概念を使い、海藻、キャベツの葉、オレンジ、バナナの皮などさまざまな物質から食品粉末を大量生産した。真空乾燥して粉砕した後、固形から粉末になった食品を水と混合し、高温にさらして、材料を建設可能な型に押し込んだ。

チームは、すべての材料が設定された目標を超える曲げ強度を示していることを発見した(ただし、カボチャの粉末を除く)。何よりも、白菜の葉を使用することで、コンクリートの3倍の耐久性を備えた製品を作り出すことができたため、カボチャから作った強度の低い材料を効果的に補強することができた。

材料は破損に耐えるだけでなく、真菌感染症、害虫、腐敗など、新鮮な農産物をだめにすることが多いあらゆる種類の危険から十分に持ちこたえることができた。空気に4カ月間曝露した後でも、劣化の兆候は見られなかった。

長期保存可能な食品の製造でも、建設向けの丈夫な原材料の製造でも、この新しいソリューションは、食品廃棄物のリサイクルとアップサイクリングに新しい風を吹き込むかもしれない。

コラーゲン配合のスケールアップ

当然のことながら、廃棄物となる資源の多くは魚のう鱗など、食用にならない部分を不要品として削り取ったものである。一回の食事で出る魚の鱗の量は大したものではないかもしれないが、水産業界の中で大量に発生する廃棄物の多くはまだ知られざる価値があるかもしれない。

シンガポールの南洋理工大学(NTU)の研究チームは、貴重な資源であるコラーゲンを抽出しようと、スズキやティラピアの鱗をこじ開け続けている。コラーゲンは強くて柔軟な繊維であり、血管の内層から腱や骨に至るまで、人体のあらゆる種類の組織に見られる。

チームは化学修飾技術を使用して、水に溶解し、創傷被覆材に組み込まれ、非常に高い治癒力を持つコラーゲン材料を作成した。驚くべきことに、魚鱗由来のコラーゲンパッチを使用すると、ヒトの内皮組織は血管形成に重要なIV型コラーゲン線維を牛由来のコラーゲンの2倍以上の速度で生成するようになった。

文化的理由と伝染病リスクにより、牛、羊、豚に由来するコラーゲンが臨床使用されたことはほとんどなかったが、魚鱗由来の材料は怪我の治療に有効であり、さらに効果的な代替手段となるかもしれない。

今後、チームは廃棄物を資源に変えるソリューションを拡大するために、シンガポールの水産業との提携を考えている。そうすることで、かつては何の役にも立たなかった廃棄物を、組織の修復と再生を促進する高価値の材料に進化させることができる。

食べ物を色素に

唐辛子の鮮やかな赤からダイジョ芋を使ったフィリピンのパン特有の紫まで、まばゆい色合いは食べることにワクワク感を与えてくれる。これらの色は食欲を刺激するが、それだけでなく、抽出・精製して塗料にすることができる。すると食品がゴミ捨て場に向かう前に、最大限に利用することができる。

香港を拠点とする新興企業であるDyelicious社は、自然食品染色と呼ばれるプロセスを利用して、厨房廃棄物から顔料と呼ばれる色を生成する分子を抽出し、媒染剤を加え、かき混ぜて鮮やかな液体混合物を製造している。媒染剤を使うことで染料の品質を高め、色相をシャープにし、布地などの製品の表面への付着性を高める。さらに、このプロセスは、傷のある製品でも同様に機能する。傷のない製品の方が好まれるため傷のある製品は廃棄されることが多いが、このプロセスは「醜い」食品を新しく上手に使用する。

Dyelicious社の染色製品は自然に分解するので、工場で生産され、水路に浸透する可能性のある染料に対して清潔でカラフルな代替品になる。産業廃棄物は河川や海を汚染する可能性があるだけでなく、中には地域の下水道に漏れ、深刻な健康上のリスクをもたらすものもある。

この新興企業は、食品ブランドと衣料品ブランドの両方と連携して、企業が環境フットプリントを削減すると同時に、輝かしい新製品を打ち出し、製品ラインの拡大に一役買っている。食品廃棄物との闘いは誰もが関係するため、Dyelicious社は学校やコミュニティセンターで染色ワークショップも開催し、簡単なアイデアが私たちの身近なところで持続可能性ムーブメントを巻き起こすことができると示している。

プラスチック代替品を作る

インドは世界の食料エコシステムの中心に位置している。この国の食料生産と消費は世界の4分の1を占めるが、生産から消費までに多くの損失が生み出される。農業には栄養ニーズを満たし、生計手段を提供するという大きな役割がある。このことを考えると、インドの膨大な食品廃棄物を減らすには、サプライチェーンの最初に戻る必要があるかもしれない。

農業従事者は効率的な時間単位で新鮮な農産物を生産するよう強く求められているため、休息できる農閑期はほとんどない。そのため、土地の肥沃度が低下するだけでなく、作物残渣(ざんさ)の焼却を余儀なくされ、1回の収穫で約3500万トンの食品関連廃棄物が発生する。

地元の新興企業であるZeroPlastLabs社は、作物残渣をバイオプラスチックに変換することでバイオマス廃棄物とプラスチック汚染の両方を扱うという一石二鳥の事業を行っている。最長500年も環境の中で存在し続ける工業用プラスチックとは異なり、生体材料は容易に有機物に分解し、土壌の肥料となる。

作物残渣には、セルロースが豊富に含まれている。セルロースは、植物の細胞壁に含まれる丈夫な分子で、人間は消化することができない。ZeroPlastLabs社はこの分子を抽出し、会社独自のCelluBlend技術でセルロースと結合剤を組み合わせることで、剛性や軟性を持つさまざまな複合材料を作り上げる。これらの複合材料はプラスチックの代替となる。

ZeroPlastLabs社はすでに50kgの作物残渣をアップサイクルし、持続可能なバイオプラスチックを2倍の重さにすることで、約300kgの炭素排出を効果的に防いでいる。

堆肥化を成功させるための新しいレシピ

食品廃棄物をリサイクルする最も一般的な方法の1つは堆肥化である。微生物の代謝活動を活性化して有機物を肥料に変え、多くの栄養素で土壌を生き返らせる。

堆肥化には大きなメリットがあるため、イノベーターはプロセスをさらに効率的で利用しやすいものにするという使命に取り掛かっている。インドを拠点とするLoopworm社、インドネシアを拠点とするMagalarva社、フィリピンを拠点とするLimaDOL社などといったいくつかの新興企業は、アメリカミズアブの幼虫を使って食品廃棄物を処理しようとしている。この幼虫は分解者として大きな働きをするだけでなく、家畜の飼料としても使える。

台湾の海岸沿いに位置するTetanti AgriBiotech社は、新しい酵素技術を利用して、わずか3時間で500キログラムの堆肥を生産する。また、この技術は生きた微生物を必要としないため、二酸化炭素やメタンの排出量も大幅に少なく、100トンの食品廃棄物から毎日約30トンの肥料を生成することができる。

一方、台湾に本社を置く別の新興企業であるBionicraft社は、ミミズを使うバイオベッセルを開発した。これはコンパクトな堆肥化キットでもあり、都市型住宅向きの素敵な植木鉢でもある。料理から堆肥化まで、食品廃棄物削減は日常生活の一部となり、人々は食品廃棄物問題で重要な役割を果たすようになってきた。

本記事で取り上げたイノベーションは食品廃棄物に新たな命を吹き込み、大量廃棄、食料不安、環境破壊の悪循環を断ち切ろうとしている。持続可能性の高い食糧システムが整備されれば、各国は多くの食料を供給すると同時に食品廃棄を減少させ、農産物分野とそれ以外の分野の経済的価値と社会的影響を高めることができる。

(2022年05月12日公開)

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