近所にファストフード店があると、血糖値と糖尿病のリスクが上昇 南アジアのデータ分析

AsianScientist - ファストフード店の近くに住むと、血糖値と2型糖尿病のリスクが高まる可能性がある。

ファストフードはすべてではないが、病気と関係することが知られている。それでも、家に帰る途中でちょっと食べたり、半端な時間につい手を伸ばしたりして、ファストフードの誘惑に負ける人は少なくない。現在、いくつかの研究から、体によくない食べ物を入手しやすい環境と生活習慣病との関連性が明らかになっている。

ある国際研究チームは、ファストフード店の近くに住むと、2型糖尿病のリスクが高まる可能性があることを突き止めた。これは PLoS Medicine 誌に発表され、2018年から2020年までのバングラデシュとスリランカの健康監視データに基づく分析が行われた。

2019年には、世界中で4億5,000万人以上が糖尿病を患っていた。南アジアでは成人の10%近くが糖尿病にかかり、年間75万人近くが亡くなっている。症例の95%以上は、肥満と運動不足に関連することの多い2型糖尿病である。

これまでの研究でも、食の環境も2型糖尿病を発症するリスクに影響を及ぼすことが分かっている。つまり、食品の物理的な存在だけでなく、文化的背景や経済的背景も、人々が食品と関わり、消費の決定方法に影響を与え得る。しかし、低中所得国に関しては十分な証拠はない。

このギャップを埋めるために、英国のインペリアル・カレッジ・ビジネス・スクールのマリサ・ミラルド (Marisa Miraldo) 博士が率いる研究チームは、スリランカ、バングラデシュ、インドの研究チームと協力して、南アジアバイオバンクに収集された1万2,000人を超える成人の健康転帰データを分析した。また、チームは、参加者の家の周りにあるファストフード店やスーパーマーケットなどさまざまな食品店の密度と近接性についてマッピングを行った。

「近接性」とは参加者の家から100メートル以内に少なくとも1つの食品店があることを意味し、「密度」は家から300メートル以内にある食品店の割合を意味する。広範囲にわたる統計分析の結果、チームはファストフード店の近接性と密度の両方が糖尿病のリスクの増大に関連していることを発見した。

ファストフード店の密度が高いある地域では、血糖値が9.21 mg/dl上昇した。研究の結果は、密度がわずか1%上昇するだけで、糖尿病になる可能性が8%上昇することも示していた。さらに、近くに少なくとも1つのファストフード店があるだけで、血糖値は16%、糖尿病の判定が19%それぞれ上昇する可能性もあった。

チームは、参加者の家のすぐ近くをマッピングしただけなので、この研究は大きく制限されたものであることに留意すべきということも述べている。この方法では、人々が家から遠く離れた他の店から食品を購入して消費する傾向について検討することはできない。

とはいえ、糖尿病予防戦略で飲食と食品入手可能性を指標とすれば、やはり効果的であろう。研究チームによると、それぞれの人口層や地域に特化した政策を実施することで、より良い食生活を促進し、糖尿病の発症率を下げる健康的な環境を作ることができる。

「万能の食品環境整備を行っても、結果は改善しませんでした。この地域とここに住む人々の糖尿病の転帰を改善し得る食品環境整備を評価するために、今後の研究が必要です」とチームは記している。

(2022年06月29日公開)

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