【AsianScientist】アジアで進化するゲノム研究

史上最大の科学的偉業の 1 つとされているヒトゲノム計画は2003年4月に達成された。1990年10月に着手された同計画には、この期間中、世界中から何千人もの科学者が参加し、方法を改善し、ついにはほぼすべてのヒトゲノムを解読した。

今日では、1 つのヒトゲノムの配列をほぼ 1 日で解読できるようになり、特異性の高い治療法や医薬品が開発できるようになっている。しかし、やるべきことはまだまだある。アジアのゲノム配列は、世界の研究の中で非常に過小評価されたままである。

国際的な DNA シーケンシング技術企業であるイルミナは、性能と持続可能性が高いツールを開発し、科学者がこのギャップを埋めることができるよう支援している。アジア太平洋日本地域の販売シニアディレクターであるロブ・マクブライド (Rob McBride) 氏は「アジアでは数多くのゲノムプロジェクトが進行中です。日本、シンガポール、インド、インドネシアはすべてこれに取り組んでおり、私たちは多大な努力をしてその支援を行っています」と語る。

イルミナは大きな進歩を遂げ、NovaSeq X と NovaSeq X Plus から構成される最新製品である NovaSeq™ X シリーズを開発した。NovaSeq X Plus はXLEAP-SBSケミストリーなどの新しいテクノロジーを利用しており、速度と精度は高まり、常温輸送にも強い。事実、イルミナによると、このマシンは従来のシーケンサーと比較して、取り込み速度は最大2倍、精度は3倍となっている。このようにNovaSeq Xのシーケンサーシリーズは、以前の製品よりもスピード、堅牢性、持続可能性が改良され、アジアでのゲノム研究と患者ケアを進化させることができる。

新しい XLEAP-SBS ケミストリー、削減された包装、超高密度フローセル、超高解像度光学部品がNovaSeq Xシリーズの特徴だ

何年にもわたるイノベーションと開発がイルミナの XLEAP-SBS ケミストリーの進歩につながった。チームは、乾燥凍結された薬剤を使用して室温での出荷を可能にし、包装廃棄物を大幅に削減することができた。このような改善は、環境に優しい製品と研究、つまり「グリーンサイエンス」を優先するイルミナの持続可能性の目標に沿って行われた。

「以前、当社では、1つの製品のフローセル構成(シーケンサーの内部に配置され、シーケンシングを可能にする集合部分)に合計 68 トンのドライアイスを使用していました」と マクブライド氏は説明する。「NovaSeq Xは、アジア太平洋日本地域全体で年間約127トンのドライアイスを節約できます。ドライアイスはすでにリサイクルされていますが、出荷に関して言えば、軽量化だけでも環境への影響を最小限にする役に立ちます。これは私たちにとって非常に重要なことでした」

イルミナは室温で出荷できる乾燥凍結薬剤を活用し、NovaSeq X シリーズの輸送に必要な包装の量を大幅に削減した

NovaSeq X シリーズは効率的な方法を採用したことで、コストも削減した。これにより、アジアの中所得国が利用しやすくなる。このツールはアジア人のゲノムの理解を深めることはもちろん、感染症との闘いにも役に立つかもしれない。特に、イルミナは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の理解に深く関与している。最初にCOVID-19 ゲノムの配列決定が発表されたとき、イルミナの技術が使用されていた。

NovaSeq Xシリーズの包装を削減する取り組みと同様に、イルミナはグリーンサイエンスと持続可能性を支援する他の方法にも投資している。イルミナは寄付、ボランティア活動、省エネ技術を通じてコミュニティを支援し、環境を保護すると同時に、献身的にゲノミクス研究を推進している。重要なこととして、イルミナはいくつかの主要な製造施設とラボでグリーンビル認証を取得していることが挙げられる。これらのラボでは、再生可能電力や屋上緑化から自然光や廃棄物システムの最適化に至るまで、無数の持続可能なソリューションを採用している。

イルミナは NovaSeq X シリーズを使用して、最終的には、迅速、カスタマイズ、正確な治療を実現する効率的な方法を開発し、ゲノム配列決定をラボベンチからベッドサイドに恒久的に移動させることを目指している。

「インドや東南アジアの市場では、人々が次世代シーケンシングの威力を認識するにつれて、医師は解決策を見出すのが容易になり、それが患者にとってよい結果を生み出すことが分かってきたため、大きな成長が見られます」とマクブライド氏は話す。

「すべての腫瘍の配列が決定され、私たち全員が効果的な個別化された治療にアクセスできるようになり、感染症が発生しても驚くことのない世界が実現するかもしれません。当社にとって、それがよい製品を開発し続ける原動力となっています」

(2023年01月10日公開)

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