チップ法を改正、半導体研究開発費の25%を税金控除 台湾

2023年02月01日 JSTアジア・太平洋総合研究センターフェロー 松田侑奈

半導体産業における世界の競争が日々激しくなっている中、台湾当局も動き出し始めた。韓国と日本が半導体産業の定着を促すため諸政策を打ち出しているが、台湾もアメリカのCHIPS法に相当する産業イノベーション条例(台湾版チップ法)を1月7日に改正した。

主な改正内容としては、半導体、5G、電気自動車など分野を優先しつつも特に分野を特定せず、国際サプライチェーンで核心地位にある台湾企業であれば、研究開発費の25%、先端製造工程を備えた設備購入費の5%を法人税から控除するということである(10条の2・新設)。期限は2023年1月1日から2029年12月31日まで。ただ、両方の控除額の総額は、当年度法人税の50%を超えてはならない。ここでいう国際サプライチェーンで核心地位にある台湾企業は、当初R&D費用が100億台湾元を超える企業と限定したが、その場合、TSMC、MEDIATEK、NOVATEKなど一部の大企業しか該当せず、50億台湾元に調整する予定と明かした。

経済部長(経産相)の王美花氏は、「10条の2を新設したのは半導体産業のためである。世界中が半導体産業に注目しており、大規模の投資や優遇措置等実施し、工場を新設する国も増えている。言うまでもなく、台湾において、半導体産業は非常に重要であり、如何に半導体産業を支えるかを考案した末に条例の改正に辿り着いた。これを機にグローバル競争において、台湾の半導体産業が更なる強みを発揮することを期待しつつ、他のポテンシャルの高い核心技術、例えば5Gや電気自動車にもチャンスを与えたく、特に産業の限定は行っていない。引き続き半導体産業が台湾経済成長を牽引する台柱になることを期待する」とコメントした。

また、台湾経済研究院総監の劉氏は、「チップ法の改正は、台湾の世界第2の半導体サプライヤーの地位の強化に大きく貢献できると思われる。アメリカやヨーロッパ、中国、日本、韓国、インドは近年半導体産業に注力しており、台湾の企業や人材の流失も目立ち始めているが、台湾もこれらの他国に負けない積極的な政策支援を行う予定なので、台湾企業は引き続き台湾で踏ん張ってほしい」と明かした。

半導体産業での諸外国の躍進が目立っているとはいえ、台湾はこれまでのノウハウとネットワーク、ハイレベルな人材のおかげで、強者の座に居座り続けている。今回の条例の改正が半導体産業の更なる飛躍につながる大きな一歩になるか、その行方を引き続きフォローしていきたい。

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