台湾、ゼロカーボンに向け1,783億台湾元投資、炭素費用徴収も

2023年2月14日 JSTアジア・太平洋総合研究センターフェロー 松田侑奈

台湾経済部は1月17日、2050年の脱炭素(炭素排出量ゼロ)の実現を目指し、風力発電(219.63億)、水素(46.15億)、新エネルギー(69.13億)、電力システムの構築と保存(760.77億)、エネルギー節約(673億)5つのプロジェクトに計1,783億台湾元を投資すると明らかにした。

カーボンニュートラル実現に向けて、台湾当局の各省庁は一丸となって諸政策や戦略に取り組んでいるが、立法院は、1月10日「気候変動対応法」を可決し、2050年のカーボンニュートラル実現の目標を明文化した。当該法律を根拠に、これから炭素排出量が多い企業等に対し「炭素費用」を徴収できるようになった。徴収は2024年より行われる見込みで、現状からすると、537の企業が徴収対象となる予定である。ここには、炭素排出量が最も多い287企業と、電気使用量が多く間接的に炭素排出量の多さに貢献している250の企業が含まれる。

なお、環境保護署は、炭素費用の徴収に合わせ、炭素税の徴収も必要と主張しているが、炭素税まで徴収した場合、社会に与える影響が大きいと想定し、公聴会の開催や市民の意見聴取を通じ、時間をかけ慎重に検討するとコメントした。また、これから適切な炭素価格の策定、多彩な税金優遇措置や政策(例:自発的に炭素排出量減少に取り組む企業に対しては、税金の優遇措置をとる)を通じ、確実に企業の炭素排出量減少を実現すると宣言した。

全世界のカーボンニュートラルの動きにあわせ、台湾も2021年4月22日(アースデイ)に「2050NET ZERO転換」を推進すると宣言した。同年3月、台湾は、「2050カーボンニュートラルに向けての路線と政策」を公開し「エネルギー、産業、生活、社会」4分野で脱炭素を実現するとし、2050年には再生可能エネルギーが電力で占める割合を70%程度まで引き上げると表明した。当時、国民党の李貴敏氏は、「再生可能エネルギーは、まだ不安定性の要素が多いにもかかわらず、70%という数字は非現実的であり、新しい技術やエネルギーへの更なる研究が必要である」と指摘した。また、全国中小企業総会理事長李育家は「脱炭酸に向けての技術イノベーションや設備の転換等は、中小企業とって大きな負担であり、政府が補助金の配布や減税政策等をしっかり行った上で、段階的に進めるべきだ」とコメントした。

台湾の2050年に向けての脱炭素戦略や炭素費用の徴収、炭素税の検討から台湾当局の脱炭素への本気度が伺える。一方、理想論であるとの批判の声も多い中、台湾は宣言の通りゼロカーボンに成功するか、今後の行方が注目に値する。

上へ戻る