流体力学の観点から多様な自然現象の仕組みに光を当てる: OIST・ピナキ・チャクラボルティ博士に聞く

2023年7月14日 聞き手 科学技術振興機構(JST)参事役(国際戦略担当) 樋口 義広

国際頭脳循環の強化は、活力ある研究開発のための必須条件である。日本としても、グローバルな「知」の交流促進を図り、研究・イノベーション力を強化する必要があるが、そのためには、研究環境の国際化を進めるとともに、国際人材交流を推進し、国際的な頭脳循環のネットワークに日本がしっかり組み込まれていくことが重要である。

本特集では、関係者へのインタビューを通じて、卓越した研究成果を創出するための国際頭脳循環の促進に向けた日本の研究現場における取り組みの現状と課題を紹介するとともに、グローバル研究者を惹きつけるための鍵となる日本の研究環境の魅力等を発信していく。今回のインタビューでは、沖縄科学技術大学院大学(OIST)流体力学ユニットの主任研究員であるピナキ・チャクラボルティ博士に話を伺った。

流体力学という学問分野は、物理学、物理化学、工学など様々な分野にまたがり、台風の強さ、月のクレーターの光条(天体表面の放射状の明るい筋)の形成、送水や石油パイプラインの内側でおこる摩擦、火山の噴煙の形状、人工心臓・弁内の血流など、われわれの世界やより広い宇宙の多くの自然現象の基礎をなしている。

沖縄科学技術大学院大学(OIST)での今回のインタビューでは、流体力学ユニットを率いるインド出身の研究者、ピナキ・チャクラボルティ教授に、OIST着任に至る興味深い道のり、流体力学研究の驚くべき奥深さ、研究者として日本の大学・研究機関で働くメリット、そして創造的な研究成果創出に向けた国際頭脳循環の重要性について話を伺った。

研究について熱く語るOIST流体力学ユニットのピナキ・チャクラボルティ教授

幸運な巡り合わせで米国イリノイ州、そして沖縄へと導かれる

チャクラボルティ博士が現在の研究に出会うまでには、興味深い道のりがあった。インドでの高校時代、チャクラボルティ博士は、勉強や試験に興味が持てない日々を過ごしていた。しかし、物理学の元教師との偶然の出会いと学校外で非公式の指導を通じて、次第に力学の分野に新たな魅力を感じるようになっていった。

「彼はとても厳しい人で、私の人生に大きな影響を与えました。与えられるだけの学校の勉強とは異なり、私が概念を理解できるような方法で物理現象を説明してくれました。彼が最初に教えてくれたのは、古典物理学、特に力学の話でした。それ以来、私は力学に強い関心を抱くようになりました」

インドは地球上で最も人口の多い国で(今年、インドは中国を抜いたと言われている)、その結果、膨大な人々が非常に少ないポジションを競い合っている。チャクラボルティ博士はこのことについて、「他の多くの国・地域同様、インドの高校でも受験準備があります。非常に競争が激しく、試験は(優秀な生徒の)選抜というよりも、排除という考え方に基づきます! 試験では、短期間にどれだけ多くの問題に解答できるかが試されます」。このようなアプローチは、チャクラボルティ博士の心に響かなかった。彼は、元教師からプライベートで教わっている現象の概念や根本的な仕組みを理解することの方により興味があった。このような学習方法は、学校環境で成功するには効率的な方法でなかったものの、古典力学を理解する上では最適であった。

高校卒業後、彼は大学で実用的な学位を取得することに狙いを定めた。元教師の指導を通じて関心を持った力学が学べる工学系分野が、自身の興味と知識にあっていると感じた。「学士課程で力学も学べる工学分野として、機械工学を選びました」と彼は述べる。結果、彼はインド・スラトのサルダールバラブバイ国立工科大学(SVNIT)で機械工学を学んだ。

工学学士号を取得した後、チャクラボルティ博士はまずアメリカ、続いて日本のOISTへと偶然の出会いにより導かれることになった。彼によれば、機械工学を学ぶと、通常は、特定概念の応用展開に焦点が当てられ、根底にある考え方を理解することに重点が置かれなくなりがちという。そのため、彼は工学原理の更なる研究を志すことにした。多くの人は、特に大学院やそれ以降の研究を考える場合、欧米のトップクラスの大学・研究機関への進学を夢見る傾向にある。チャクラボルティ博士は、そのような思いから、アメリカ・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校に入学した。「もっと勉強したいと思っていたところ、『理論と応用力学』という、工学、物理学、応用数学が交差するプログラムを見つけたのです。まさに私が探していたものでした」。そして、チャクラボルティ博士の次なる旅が始まった。

アメリカ留学中に修士号と博士号を取得したチャクラボルティ博士は、留学期間の終盤にさしかかった頃、彼の研究人生を左右するような偶然の出会いをする。大学の地質学部に入ったばかりの新任教授が、珍しい形状の火山噴出物の写真を工学部の関係者に回覧し、そのメカニズムについて洞察を示して欲しいと呼びかけた。それは、チャクラボルティ博士にとって、流体力学の知識を生かして火山噴煙のメカニズムを解明することに関心を抱くきっかけになった。

火山噴煙は、火山が噴火の際に噴出するガスや火山灰などの混合物である。噴煙は上昇しながら周囲の空気と混ざり合い、上昇した物質が空気と同じ密度になると、今度は水平方向に広がり、大きな傘の形をした「傘状領域」を形成する。この傘には、力学と数学を駆使すればより理解が深まる興味深い形状があった。珍しい形状の噴煙の写真を回覧した教授は、博士課程を卒業したチャクラボルティに同大学の地質学部で特別なポストを提供してくれた。「私は、どんな問題を研究してもよいという、非常に居心地のいいポスドクのポストを提供されました」。これは、科学研究では細かく定義された目標やターゲットが当たり前のアメリカでは珍しいことだった、と彼は付け加えた。

ポスドク期間に彼は、噴煙をさまざまな角度から観察することができた。火山の噴煙は、対流圏界面に近い10〜15kmの高さまで上がると、典型的な「傘」のような形に広がる。この上昇する噴煙の内部の運動は垂直であり、その後外部に放射されると考えられていたが、チャクラボルティ博士は、噴煙の垂直軸を中心とした回転運動があることを発見し、「火山性中間サイクロン」と名付けた。彼はこの発見を科学誌Natureに2009年に発表した。

その後、チャクラボルティ博士は教授職を探すことを決意し、応募書類をいくつかの宛先に出したところ、OISTから面接の知らせが届き、この新しいチャンスを検討してみることにした。この時、幸運の風は、天候が邪魔をして逆風となった。「当時、私はイリノイ州に住んでいました。OISTの面接のためにイリノイ州の空港に行ったところ、吹雪で飛行機がキャンセルになったのです」。彼は、実は飛行機が大嫌いで、「行くな」と運命で定められているのではと思ったと当時の心境を吐露した。しかし、幸いにも日本へのフライトとOISTでのインタビューは、数日後に再調整された。「沖縄に来て、私の人生はまた別の意味で大きく変わりました。イリノイ州のトウモロコシ畑のど真ん中から出て来た私は、この土地の自然の美しさに圧倒されました」

しかしながら、最終決断に至るまで、チャクラボルティ博士にはいくつかの疑問があった。「当時の学長だったジョナサン・ドーファン博士からOISTのコンセプトを説明されたとき、たくさんの疑問を抱きました。全く新しい場所で、どんな大学になるのだろうか? 私が慣れ親しんだアメリカのシステムとは全く異なる日本の伝統的な大学システムに参加することには正直、躊躇がありました」

また、世界中の多くの研究機関で、研究者たちは研究を続けるために助成金を申請するという果てしない競争に身を置いているという現実も、OIST移籍の重要な検討材料となった。チャクラボルティ博士は、当時すでに大きな自由度を持つポストに就いており、このような助成金を申請する必要がなかった。「では、なぜOISTに来る必要があるのでしょうか? それには、何か別の追加的なメリットがなければいけません。私にとって最大のメリットは、『ハイトラスト・ファンディング』という考え方でした」

彼はOISTの成功の理由の1つに言及した。「当時の学長と話をした結果、この大学がアメリカと同じようなシステムであること、完全に英語の大学であること、さらにハイトラスト・ファインディングという仕組みを持っていることを理解しました。この3つは非常に魅力的な要素でした」と振り返りつつ、「それ以外では、純粋に沖縄が大好きだったということです。とにかくここが好きなのです。驚くほど美しい場所であるということ以上に、ここに住んでいる人たちが好きなのです。また、安全・安心に快適に暮らせることも好きです。小さなことであれこれ悩むこともありますが、すべてを考慮すると、OISTは最高だと言わざるを得ません」と続けた。チャクラボルティ博士は、今では故郷と呼ぶようになったOISTと沖縄を賞賛した。

こうした一連の出来事や機会、決定によって、チャクラボルティ博士は、インドでの高校時代の個人指導から、OIST教授としての現在のポストまで導かれることになったのである。与えられたチャンスに果敢に挑戦し、さまざまな環境や研究分野を経験することで、ユニークな視点が生まれ、さまざまなテーマに関する画期的な研究成果につながった。彼の豊富な経験と国境を越えた行動は、国際頭脳循環が科学者個人と研究機関の双方にとって大きな利益をもたらすものであり、今後さらに奨励されるべきものであることを示している。

パイプ内の流れ、台風、彗星、火山 - 流体力学の幅広い世界

「流体力学」と聞くと、水の流れのようなものを思い浮かべるだろう。「流体というときには、水のような液体だけでなく、気体も指します。ですから、流体力学の研究では、液体だけではなく気体も流体として扱うのです」。しかし、チャクラボルティ博士は、この分野は実はもっと奥が深いものだと言い、見落とされたり、あるいは「流体」とはみなされないものの例として、月面で見られるクレーターの光条を挙げた。クレーターの光条とは、スイス・チーズのような月面イメージとなる、衝突痕から伸びた放射状の筋のことである。これは火山活動によって形成されたと長い間考えられてきたが、実際には、隕石が月面に衝突して地殻を粉砕し、その粉が光条の形状に散布されたものである。

チャクラボルティ博士は、同僚の研究員と共に、光条形成の根本的なメカニズム等の問題を解明しようと奮闘した。「こうした光条がどのように形成されるかは、大きな謎でした。なぜ、クレーター全体に均一に粉が降り注がないのか?なぜこのような光条の形になるのか?」。研究員らは、砂のベッドを作ってその上に鉄球を落下させるという実験を行い、この光条がどのようにできるかを解明しようとした。しかし、何度繰り返しても砂は均一に散らばってしまい、実際の月面のようにはならなかった。

そんな中、偶然の出来事がこの問題を解決することになった。科学者が実験を行う場合、再現性のため、通常は非常にコントロールされた環境(方法)で、特定のアイデアや仮説を検証しようとする。ところがある日、研究員が端折って、実験に使う砂床を完全に平らにしなかった。その結果、不規則な波形のような構造が残ってしまったものの、追い求めていた結果につながった。

チャクラボルティ博士は、理解しやすいように、各ステップをジェスチャーで示しながら、そのメカニズムを説明した。「砂は動いていないときは固体ですが、動いているときは流体として振る舞います。鉄球が砂の表面に落ちると、砂の中に衝撃波を発生させます。これが表面に伝わると、物質が放出されます。表面が谷のように湾曲していると、その物質が集束し、その集束が光条を形成するのです」。流体力学は他の多くの分野でも応用できるため、様々な現象にむすびつけて考えることができる。「流体力学というのは、物がどのように流れるかということであり、ある意味、あらゆることが流体力学に行き着くと言えるのです。この場合、粉砕して粉末になった物質がどのように流れるかということがポイントです」

チャクラボルティ博士は、流体力学をベースに他の事例も研究しており、多くの実例を挙げた。流体力学の応用範囲は広く、私たちの身の回りにある現象を説明するのに使えることが多い。「現在、未解決の大きな問題の1つが、台風に関する理解です」と彼は続け、沖縄の住民である彼にとって身近な話題に触れた。

台風には多くの複雑なプロセスがあり、そのメカニズムを理解することは非常に困難である。「台風やハリケーンの研究では、フィールド観測もありますが、理論やシミュレーションが一般的で、実験室での実験はありません」チャクラボルティ博士の研究室では、実験のために人工の台風を作り出すというプロジェクトが進行中である。

現在、台風予報は、台風が来る約5日前にどの地点を通過するかといった予測の信頼性は高いものの、台風の強さを予測することはまだ非常に難しい。チャクラボルティ博士は、台風の海上での動きはパイプの流体力学と多くの共通点があり、海面との境界での摩擦が、台風の強度を理解する鍵の1つであると説明する。

パイプや火山のマグマの流れ、台風の強さ、静脈や人工心臓の血流など、流体力学の視点が理解に役立つ無尽蔵の事例について、チャクラボルティ博士は熱心に説明した。流体力学という非常に奥の深い分野には、未解決の問題がまだたくさんある。OISTでのチャクラボルティ博士の研究が、今後さらに多くの問題に答えてくれるだろう。

クレーター光条現象を説明する実験動画
(OISTより提供)

理想的な研究拠点としてのOIST

OISTでの経験について尋ねると、チャクラボルティ博士は、まず沖縄を拠点とすることについて、「地理的に少し孤立しているため、問題や制約がいくつか生じることがあります」と答えた。アフターコロナの世界では、リモートワークやオンライン会議など、さまざまなデジタル手段が利用できるようになったが、これは、人が大勢集まる大規模な組織を完全に代替するものにはならない。しかし、チャクラボルティ博士にとって、こうした制約がかえってうまく機能することがあることがわかった。

「実際、このような制約は、私にとって大きな利点になりました。地理的に隔離されているため、中断することなく斬新なアイデアを追求することができるのです。リスクを好む人、そういうチャンスをつかみたいと思う人には、OISTはぴったりだと思います」。 従来の助成金ベースの研究環境では、資金調達が難しく、成果主義が強いため、研究者が自分の関心のあるテーマや分野を追求することに対して、はるかに制約が大きい。そのため、一般的に、教授陣たちは、結果の追求という観点からのアドバイスをする傾向にある。しかし、OISTのユニークな環境では、この種のテーマに光を当てるために必要な研究の自由度がある。

さらに、「私にとって、大学の豊かさは、人々の知的多様性から生まれるものです」と彼は続けた。OISTの教員の半数以上は外国人で、教育やアドミニストレーションはすべて英語で行われている。この多様性、そして国際性が、真にユニークなアイデアと「豊かさ」を生み出している。このことは、スタッフ、学生、研究者の国籍についてだけでなく、そのアプローチについても同様である。「イノベーションと知財を重視する人もいれば、異なった角度からアプローチする人もいる」。このような変化と多様性が、OISTの魅力の1つである。

またチャクラボルティ博士は、OIST独自の研究資金制度についても触れ、「ハイトラスト・ファンドを得られることは、OIST教員の特権です」と述べた。この資金制度がもたらす柔軟性は、研究者にとって興味のある研究分野を追求するために必要な自由を与えてくれることから、彼のような研究者にとって大きな恩恵である。研究者が助成金やファンディングのタイプに制約を受けると、(研究資金の使途が自由であれば手がけることができたであろう)研究や発見の多くが手つかずになってしまう可能性がある。OISTの教員に与えられるハイトラスト・ファンディングがもたらす知的自由は、今回の一連のインタビューの中で何度も繰り返して称賛された。

ユニークな立地、驚くほど豊かなスタッフの多様性、そしてハイトラスト・ファンディング制度の組み合わせにより、チャクラボルティ博士は他の場所では不可能であった興味に基づいた研究テーマに幅広く取り組むことができた。「OISTに出会ったのは本当に偶然で、私はリスクを冒してみたかったのです。今、ここでとても満足していますし、これからもおもしろい問題を追求し続けたいと思っています」

チャクラボルティ博士の研究室があるOIST第2研究棟のフロアマップ。
OISTでは、学部や学科がなく、全く異なる分野同志の研究室が隣接している。
日常的に異分野の研究者と交流することで、分野横断的な新しい研究機会が生まれることも少なくない。

国際頭脳循環について、そして未来の研究者へのアドバイス

チャクラボルティ博士は、OISTでの職務の一環として、大学院生に流体力学を教えている。「OISTの特徴ですが、学生たちのバックグラウンドは非常に異なっています」。学生は、様々な分野を学ぶことが推奨されており、時にはこれまで力学を学んでこなかった学生も彼の講義を受講する。例えば、数学者、エンジニア、材料科学者、生物学者などの学生を教えたことがあるという。このような多様性は、様々な視点や知識を共有することを可能にする。

OISTでは、「ラボ・ローテーション」と呼ばれる制度を導入しており、すべての学生が、必ず1回は専攻外の分野の研究を経験する。こうした知識の循環は、OISTの長所として繰り返し強調された。学生たちが彼の研究室に加わった経緯について、チャクラボルティ博士は、「ある学生は、私の講義を受け、私のグループでローテーションに参加した結果、流体力学が好きだとわかったようです。当初の研究計画には予定されていなかった流体力学を私の研究室でやりたいと言って入ってきました」。OISTの国際性、ラボ・ローテーションによる知の循環のメリット、そして大学院生や他の教授たちと共に分野横断的な研究ができることは、OISTの特長の1つである。

日本での研究や仕事を希望する研究者や学生へのアドバイスを求められたチャクラボルティ博士は、多くの人々が日本について抱く一般的な印象について語った。日本は、観光地として有名で、新型コロナウイルス感染症以前は膨大な年間観光客数を誇っていた(現在、観光客数は着実に回復しているが、コロナ前と比べるとまだ少ない)。しかし、研究者として経験を積む場所としては、日本は必ずしも高く評価されていない。その理由の1つとして言葉の問題が出てくる。OISTでは英語が公用語であるため、彼はこの点について提言する。「海外から人を呼び込んで、日本でより多くの選択肢を与えたいのであれば、特に大学・研究機関で、英語の使用範囲を広げることが鍵になると思います」

また、研究者が日本で学位を取得した後に、どのようにキャリアアップしていくかという問題もある。彼の研究室で働いていた優秀な外国人研究員の一人が日本の大学で助教授ポストを得られなかったケースを引き合いに出し、博士は、グローバルな大学院生が日本に残って学術界で働き続けられるように、もっとオープンにしていくべきだと提案する。「もし、学術界のシステムをボトムアップでオープンにして、もう少し自由が与えられれば、本当に多くの人、非常に優秀な人たちが日本に入ってくると思います」

OISTはこうしたプロセスに貢献する素晴らしい枠組みを有しており、研究機関として、また外国人の誘致において達成した成果は、将来に向けて見習うべき可能性のある手本となりえる。「このOISTの成果を、さらに発展させてはどうでしょうか」とチャクラボルティ博士は熱っぽく語った。従来の手法や視点を変えることは難しいものの、OISTから学び、参考にすることは、日本を研究拠点としてさらにアピールし、日本でより多くの研究成果を生み出すための一つの方法かもしれない。

チャクラボルティ博士がOISTで研究するに至るまでの興味深い道のり、他のグローバルな同僚との協働における豊富な経験、そして彼の成功例の数々は、優秀な人材の国際的な循環が学術界においてきわめて重要であり、日本における研究の未来のためにさらに推進されるべきものであることを示す好例である。この点に関して、OISTは研究機関として重要な役割を担っており、チャクラボルティ教授のようなグローバルで活躍する研究者は、日本にある研究機関から優れた研究成果を引き出すための貴重な資産である。

聞き手、樋口義広・JST参事役(国際戦略担当)
インタビューは2023年3月20日、OIST=沖縄恩納村=にて実施。

ピナキ・チャクラボルティ(Pinaki Chakraborty):
沖縄科学技術大学院大学(OIST) 教授

インド・スラトのサルダールバラブバイ国立工科大学(SVNIT)工学部卒業後、渡米し、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で修士号と博士号を取得した後、現在に至る。現在、OISTの流体力学ユニット主任研究員。


<OISTについて>

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、世界をリードする研究を行い、次世代の科学リーダーを育成し、沖縄のイノベーションと持続可能な経済成長を促進することを目的とした大学院大学である。2011年の創立以来、OISTは国際的な科学コミュニティで高い評価を得ている。規模を補正した国際比較で、OISTは、高品質でインパクトのある科学研究成果について世界のトップ10に入る研究機関となっている。

OISTホームページ: https://www.oist.jp/

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