【AsianScientist】教育現場は生成AIとどう向き合うか?

好奇心旺盛な学生が生成AI(人工知能)という未知の領域に挑戦する中、教育制度は質の高い教育を提供しつつ、AIを適切に使用させるという使命を担う。(2023年10月2日公開)

携帯型育成ゲーム「たまごっち」から電卓やスマートフォンに至るまで、新しいおもちゃや道具は常に学校に入り込む。比較的無害なものもあれば、生徒の教育に大きな悪影響を与え得るものもある。ChatGPTは生成AIの中でも最もよく知られているものの1つである。人間のように会話し、文章を作成できる機能を持つため、教育現場に急速に入り込んでいる最新のツールである。最初のリリースから数か月のうちに、何百万人ものユーザーが、コンテンツ作成、テキスト翻訳からコードのデバッグに至るまで、ChatGPTの機能を試してみた。

他の生成AIの中にはDALL-EやMidjourneyなど、テキスト作成にとどまらず、テキストプロンプトからオリジナルのデジタル画像を生成し、あるいはスクリプトやブログからビデオ全体を生成するものもある。このような魅力的な機能を持ち、利用しやすく、そして人気が高まっていることから、好奇心旺盛な若者たちが学校でこれらを使用しようとするのは無理もない。

現在、教育委員会は、すべての生徒に平等な学習の場を確保しつつ、効率的な学習のためにこのようなテクノロジーの使用方法に関するガイドラインを設定するという難しい課題に直面している。

AIは私の宿題をやってくれるのか?

学生たちはテクノロジーに精通した世代であり、生成AIのリリースとともにこれらのツールを積極的に利用して宿題に取り組んでいる。学生たちはものの数分で説得力のある小論文を大量に作成し、質問に対する簡単な回答を解析し、レポートを簡潔に要約することができる。Forbes誌が報じた調査では、学生の89%が宿題を仕上げるためにAIプラットフォームを使用したことを認めた。一部の州政府は、ネットワークからこのサービスをブロックしたこともあった。

ChatGPTの開発者であるOpenAI社は、教師と協力して解決策を見つけようとしている。AIを利用した不正行為が蔓延する中、その対応策として、OpenAIは、同社独自のテクノロジーを使い、作成された課題を識別できる予備分類器を発表した。

OpenAIの分類器は、AIが生成したコンテンツの26%を確実に識別したが、人間が書いた文の9パーセントに誤ってフラグを立てた。Turnitinのような盗作検出の大手サービス企業もAI検出ソフトウェアを提供しているが、人間が書いた小論文にAI捏造のフラグを立てるという同様の問題を起こしている。さらに、ChatGPTその他の生成AIが生成するものは、生成物を捕捉するために使用される同じ分類器のフィードバックからの学習結果であるため、検出はさらに難しくなるであろう。

機械に任せる

トビー・ウォルシュ(Toby Walsh)博士はニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)のAIの教授である。博士は、このような問題が起こるのは、私たちが間違ったものを試験していることを示すと考えている。

「教師が学生に小論文を課すのはそれが少ないからなのではありません。小論文は学生が主張を組み立て、テーマについて批判的に考える能力を測る方法であるので、教師は学生に小論文を課すのです。興味深いことです」とウォルシュ氏はスーパーコンピューティング・アジアのインタビューで語った。

コンテンツ作成タスクを機械に任せると、思考を素材の選択や管理にもっと集中させることができる。ウォルシュ氏は、例えば、学生はChatGPTを使用して小論文を作成し、分析と批評を行ってもよいと語った。すると、主張を提示し、批判的な分析や探求に必要なスキルの微妙な違いを直接的に判断できる。

現代的な電卓が最初に利用され始めた頃、教師の間で同様の論争が巻き起こったが、最終的には学習に役立つことが証明された。お決まりの計算を任せることで生産性が向上し、学生はさらに高度な数学に集中できるようになる。現在、電卓は時計、電話、コンピューターなどあらゆるテクノロジー製品の一部になっている。それと同様に、生成AIは私たちの日常生活の一部になる可能性がある。

多くのソフトウェア会社はすでにこの変化を受け入れており、自社のツールキットにAIアシスタントを組み込んでいる。ChatGPTは現在「Microsoft Turing」という名前でMicrosoft 365スイートに組み込まれている。また、生産性アプリケーションであるNotionは「Notion AI」を導入して、そのプラットフォーム上で面倒なタスクを自動化している。世界中が新しいテクノロジーを受け入れようとしているのだから、学生も社会に出たときにその使用方法を知る必要がある。

教育と学習のための新しいパラダイム

学校が生成AIを受け入れるならば、教師はテキストの要約や合成、概念を理解しやすいように分割するなど、教室で最も役立つ機能について考える必要がある。

学生にとって、生成AIは復習ノートをまとめたり、長い記事を読みやすく分割したりするのに最適なツールである。学生は個人でノートを書き直す代わりに、ソフトウェアを利用して授業内容を分かりやすく要約し、ニーズや学習スタイルに応じてカスタマイズできる。たとえば、学生はChatGPTに対し、人物に関する小論文を作成するにあたり履歴の記録を年代順に並べたり、試験が近づけば内容をテーマごとに変更するよう指示することができる。

AIは優れた個人教師としても機能するので、学生は評価を気にすることなく質問できるようになる。「座ったまま質問することができます。質問がどれほどレベルの低いものであってもよいし、繰り返しても問題ありません」とウォルシュ氏は述べた。例えば、現代の学生にとって、プログラミング言語の学習は難しいテーマである。AIツールは、各文を明瞭に説明し、適切な注釈付きコードを生成し、学習効果を促進することができる。

しかし、生成AIの恩恵を受けるのは学生だけではない。教師はAIツールを授業計画に使用して、学生のための参考書を作成したり、多肢選択式のクイズを作成したり、理論の矛盾に注目して小論文を採点したりすることもできる。

さらに、生成AIは各学生に合わせた個別学習を提供できる。Carnegie Learningはこのようなサービスを提供する企業の1つであり、AIを使用して学生の進捗状況を追跡して授業の計画を立てる。個別化のレベルは高く、教室全体の学生に対して1人の教師ができることを超えており、学生の学習プロセスはより効果的になる。

しかしながら、AIツールにも欠点はある。現在のところ、生成AIは依然として話を創作しながらそれを事実として発表する傾向がある。学生も教師も、AIツールを使用する前に、ツールによって合成されたコンテンツを慎重に選ぶ必要がある。

生成AIを警戒すべきか?

社会が新しいテクノロジーを受け入れても、多くの場所でその使用に対する懸念はいまだに続いていることを理解しなければならない。教育における生成AIの推進を取り巻くのは、法的・倫理的な懸念である。

問題の1つは、これらのアプリケーションを通じて共有される情報の機密性に関するものである。たとえば、ChatGPTはチャットボットを改善するために会話は記録されると明示しているが、2023年3月20日にデータが侵害され、会話と支払い情報が漏洩したことがあった。過去のセキュリティ侵害もあることから、イタリアは現在その使用を禁止しており、他の欧州諸国も厳格な規制を課している。

米国では、著作権で保護されたアルゴリズム訓練用データの使用をめぐり、現在も集団訴訟が続いている。モデルの倫理訓練は、著作権で保護されたデータを使い訓練されたモデルが作成した作品の所有権など、アーティストの知的財産権に関する懸念を引き起こしている。

このような状態であっても、専門家は持続可能性の高い解決策が現れることを期待している。過去において、音楽業界や映画業界もファイル共有サービスであるナップスターの立ち上げ時に同様の問題に直面した。オンライン著作権侵害の急増には、ユーザーが著作権基準を守りつつコンテンツにアクセスできるストリーミングサービスを提供して対処した。

ウォルシュ氏は「生成AIも同様の進化を遂げ、訓練に使用されたテキストやコンピューターコード、画像の所有者に価値を還元することになるでしょう」と述べた。

生成AIの作品が目に見える利益を生み出す中、政治家たちは同じ生成AIによって作成された2つの同一の作品という難問に直面すれば所有権に関する政策と格闘する。

フィネガン法律事務所のパートナーであるマーガレット・エスクネ(Margaret Esquenet)氏は、フォーブス誌の記事の中で、米国法の下では、「正当な著作権所有者がクエリを使いAI作品を生成した人物であると仮定しても、独立した創作という概念は、クエリから同じ作品を生み出した2人の当事者が互いに権利を行使することを妨げる可能性があります」と述べている。

生成AIの公正な使用に関連して生じる新たなジレンマに取り組むのは容易ではなく、考慮すべき点は数多くある。学校が生成AIを受け入れるにあたり、教師は学生にこれらの問題を示し、考えてもらうことから始めるべきであろう。

教師VS生成AI

高品質の仕事を行える生成AIIが突然出現したことにより、これらのロボットが最終的に教師に完全に取って代わるのではないかと疑問に思う人もいる。ウォルシュ氏によれば、答えは「ノー」だという。

教師は学生のやる気を引き出すことのできる存在であることに変わりはない。教師は学生の心理や精神的障壁を理解するという能力を持っており、これは教育において重要な要素であるとウォルシュ氏は力説した。教師が提供する社会的知性と感情的なつながりが機械によって再現できるかどうかは依然として不明である。今のところ、教師は、将来の世代の心を形成する上で、依然として最も重要な役割を持つ。

とはいえ、教室での生成AIの適切な使用は、教師が現在直面する困難な課題となっている。これらの機械が進化し続け、より人間らしくなり、よりインテリジェントになっても、課題をさらに複雑にするだけである。どのような制限が課されようとも、教師は生成AIの潜在的なリスクと利点について学生を教育し、責任ある倫理的使用を奨励することで、このプロセスにおいて重要な役割を果たす。

上へ戻る