教育、家族への経済的支援、およびソーシャルワーカーは、児童婚を防ぐ上で重要な役割を果たすことができる。(2023年11月1日公開)
異常気象により低・中所得国で児童婚の増加が加速しており、その多くがアジア諸国であることがInternational Social Work誌に発表された研究で明らかになった。世界中の子供の花嫁の数は、南アジアがほぼ半数を占め、3分の1はインドが占めている。
研究チームは、10のデータベースから1990年から2022年の間に英語で発表された20の論文を特定した。彼らはこれらの研究を検証し、データを抽出し、その品質を評価した。異常気象と児童早期強制婚 (child, early, and forced marriage:CEFM) との関連性を調査したところ、異常気象とCEFMの間には正の関係があることが判明した。
干ばつや洪水などの異常気象は児童婚に直接的な影響を与えないものの、論文の筆頭著者でオハイオ州立大学博士課程に在学中のフィオナ・ドハティ (Fiona Doherty) 氏は「これらの災害は男女不平等と貧困という既存の問題を悪化させ、家族を対応策としての児童婚に向かわせる原因となるのです」と述べた。
チームは、災害とジェンダーに基づく暴力との関連性を明らかにする証拠が多数あるという。チームは、この複雑な問題に対する意識を高め、ソーシャルワーカーやその他の医療専門家が災害計画や災害対応においてこの複雑な問題を検討することも望んでいた。
国連児童基金 (ユニセフ) によると、世界中で、少女の5人に1人が18歳未満で結婚している。低・中所得国では、その数は 40% に増加する。高所得国での研究はあまりなかったため、チームが検証した研究のほとんどは、バングラデシュ、インド、パキスタン、ネパール、ベトナムなどのアジアとアフリカの低・中所得国で実施されたものだった。
自然災害が児童婚に及ぼす影響は複雑かつ多面的なものとなっている。多くの場合、経済的理由が大きな役割を果たしている。
チームが調査した研究の1つから、バングラデシュでは2009年のサイクロン・アイラのあと、家庭の経済的負担と食料負担を軽減するために娘たちは早婚となったことが判明した。「児童婚は、災害によって家庭が直面する経済的脆弱性や食糧不安を軽減するための対策と考えられていることが多いのです」とドハティ氏は語った。
経済的な理由だけではない。論文の共著者でありオハイオ州立大学で社会福祉学を教えるスミサ・ラオ (Smitha Rao) 教授は、気象災害によるさまざまな波及効果が児童婚の増加につながっていると述べた。
洪水、サイクロン、その他の災害からの避難者が住むコミュニティ・キャンプでは、少女が性的嫌がらせや暴力の標的になることが少なくない。ラオ教授は「このような状況では、家族が幼い娘たちを嫌がらせや性暴力から守るために結婚させるという選択をすることもあります」と語る。
ラオ教授とドハティ氏はAsian Scientist Magazineのインタビューで「 児童婚と異常気象現象との関連性については、特に気候変動によりこのような現象が増えていることから、多くの事例証拠が存在します。CEFMはジェンダーに基づく暴力の特定の形態であり、生涯を通して少女に長期的な影響を与えます。私たちは異常気象とCEFMとの関連性について現れた証拠を調べたいと思いました」と述べた。
証拠はネガティブな状況を示しているようではあるが、それでも希望はある。この研究から、教育を受けた少女は早期結婚の可能性が低いことが分かった。また、親が高学歴であれば、娘に早婚を促す可能性が低くなることも示されている。
幼くして結婚した子供は十分に教育を受けることができず、その後の人生に悪影響を及ぼす。
チームは教育だけでなく、児童婚を禁止する厳格な法律の制定も必要だとしている。さらに、経済的困難は娘の早期結婚を強いる重要な要因となるため、貧困家庭への支援が欠かせない。
検証した研究は主に南アジアで実施されたものだが、チームは、それはその地域が最も問題を抱えているということではないと述べる。ドハティ氏は「南アジアは、CEFMと異常気象を明示的に結びつける研究が実施された場所だからです」と教えてくれた。
しかしながら、CEFMに関する調査は性的マイノリティをほとんど除外している。 世界的な統計によると、2021年はジェンダー・ノンコンフォーミングである人々が最も多く殺された年であった。検証の中で、現在の証拠の限界が明らかになった。
研究チームは、世界中のソーシャルワーカーや医療専門家が、異常気象や気候変動の社会的影響を注意深く監視するとよいと述べる。これらの人々は CEFM と気候危機についての意識を高め、影響を受ける個人やグループを支援機関と結び付けることができる。