【AsianScientist】気候変動、農作業でのジェンダー不平等を悪化 女性従事者のためのホットスポット地図作成

研究者たちは、女性農業従事者のためにホットスポットの地図を作り、気候情報に基づいた政策が可能となるようにしている。(2024年1月31日公開)

気候変動は女性に不均衡な影響を与える。女性が水汲みをしなければならない地域社会では、移動距離は長くなる。男性と比べて女性の食事量が制限される文化は珍しくないが、気候変動がもたらす自然災害により、この格差はさらに悪化する。また、 気候変動の後に起こる影響により、女性は性別に基づく暴力や搾取を受けやすくなる。

気候変動が女性に与える影響は、ジェンダー不平等が存在し女性が農業に従事する地域でもっとも深刻である。多くの女性が農業活動に携わる地域について考えていただきたい。そこでは気候変動が不作、害虫の発生、災害の増加などを引き起こし、農業に悪影響を及ぼしている。

ある国際研究チームはこのような地域をマッピングする方法を開発し、その研究論文をFrontiers in Sustainable Food Systems誌に発表した。気候・農業・ジェンダー不平等ホットスポットと名付けられたこれらの地域では、気候が食料生産に及ぼす影響が性別と関係している。

国際稲研究所の研究者であり、論文著者の一人であるアヴニ・ミシュラ (Avni Mishra) 氏は「この方法は、グローバル・サウスの女性農業従事者に対する気候変動の影響を視覚化する強力なツールです」と述べた。

著者たちは、社会経済データと地理空間情報を組み合わせて、低中所得国のホットスポットの地図を作った。 この方法は、各地域における気候変動の深刻さだけでなく、その影響に対する女性の曝露度と脆弱度も考慮した。曝露度が大きければ女性の農業従事者が多いことを意味し、脆弱度が大きければ自由が制限されるなどの不平等を意味する。

研究チームは、最も危険にさらされているのは南アジアとアフリカ諸国であることを発見した。さらに詳しく調べたところ、パキスタン、バングラデシュ、マリ、ザンビアの 4 カ国でホットスポット地域があることを見つけた。 パキスタンとバングラデシュで気候変動が女性に与える主な影響は、気候リスクへの曝露度であった。一方、マリとザンビアでは、脆弱度であった。世界中で、女性は様々な農業活動に従事しており、気候が特定の作物の生産に与える影響も様々である。このことを証明するにあたり、著者たちは特定の作物の地域的なホットスポットを発見した。

たとえば、バングラデシュ北部の 3 つの地域は稲のホットスポットである。気候変動によりサイクロンが増加し、土壌の塩分濃度が高くなり、稲作が困難になっている。同時に、海外に渡って働く男性が増加しているため、稲作に従事する女性は増えている。

このようなホットスポットを教えてくれる地図があれば、政策をより充実させることができる。利害関係者は地図を使い、気候変動、リスクへの曝露、不平等が凝縮し最も壊滅的な影響を受ける国や地域を特定することができる。特に低中所得国では情報が不十分なことが多いが、ホットスポット地図は最も危険にさらされている国々に優先順位を付けることができる。

東南アジアは、世界の中でも最も気候変動を受けやすい地域の 1 つである。 気候災害の影響を軽減するために、各国は地上データを収集するメカニズムへの投資を増やし、気候ホットスポット地図を改善する必要がある。たとえば、本記事が取り上げている研究では、漁業とそれに関連する活動についてのデータが十分にないため、漁業に関する分析はなかった。

最後になるが、女性が労働力の大部分を占めている国であっても、女性農業従事者は依然としてほぼないがしろにされている。政策立案者は構造の中で女性農業従事者が不平等を受けることについて考え、女性が働きやすい構造を作るべきである。

「まとまった介入が重要です」。 ミシュラ氏は「気候ファイナンスへの取り組みは女性農業従事者にも焦点を当てる必要があります」と述べた。

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