インターネット依存症は、社会生活、学業、仕事に悪影響を及ぼす。深刻になると、身体的な痛み、健康問題、精神疾患が引き起こされる。(2024 年7月22日公開)
東アジア・太平洋地域は、人口の71%がモバイルインターネットを使用しており、北米、欧州、中央アジアに次いで、世界で2番目にモバイルネットの普及率が高い。さらに、スマートフォンでモバイルインターネットに接続している人口の割合は、2022年末までに66%に増加した。PLOSに掲載された最近の研究は、インターネット依存症に苦しむ青少年には、中毒行動の原因と考えられる脳の変化が起こっていることを明らかにした。
インターネット依存症 (IA) は、インターネットを使用したいという衝動に抵抗できない人に発生し、精神的健康、社会生活、学業、仕事に悪影響を及ぼす。身体的・対人的に深刻な影響を及ぼし、気分や耐性に関連する症状が見られることがある。重症の場合、身体的な痛みや手根管症候群、ドライアイ、不規則な食生活、睡眠障害などの健康上の問題が現れる。さらに、IAと他の精神疾患との併存疾患との関連も顕著である。
2021年、世界でのIAの有病率は3.05%だったが、アジア諸国の有病率は5.1%であり、ヨーロッパ諸国の2.7%よりも高かった。
研究者たちは、機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) を使用してIAを患う人々の脳領域の相互作用を調べた12の研究を分析した。これらの研究は、IAに悩む東アジア諸国の10代のボランティア237人を対象に、安静時とタスク実行中の両方の脳活動を調べた。その目的は、脳と、インターネット依存症によって引き起こされる変化、特に行動形成に重要な役割を果たす脳ネットワーク間の接続性の変化を観察することだった。
分析から、IAは青少年の脳のさまざまな神経ネットワークに影響を及ぼすことが分かった。特定のネットワークの活動を高めるが、他のネットワークの活動を低下させるのである。
インターネット依存症の青少年とそうでない青少年を比較すると、この障害は注意力、計画力、意思決定を伴うタスクの実行中に特に目立っていた。脳内には「デフォルトモードネットワーク」という領域がある。特定の活動に集中せず何も考えていないときに活性化する領域であるが、依存症の参加者には領域の活性化と非活性化の両方が見られた。
このような変化は、青少年の知的能力、身体協調、メンタルヘルス、全体的な発達だけでなく、依存的な行動や傾向に影響を及ぼすことが分かった。
研究の筆頭著者であり、ロンドン大学グレート・オーモンド・ストリート小児保健研究所の修士課程の学生であるマックス・チャン (Max Chang) 氏は「思春期は重要な発達段階であり、肉体、認知能力、性格が大きく変わります。その結果、この時期の脳は、強迫的なインターネット利用、マウスやキーボードの使用への渇望、メディアの消費など、インターネット依存症に関連する衝動に特に陥りやすいのです」と述べた。
チャン氏は、この研究結果は、青少年の生活に有害な行動や発達の変化をもたらす可能性があることを示している、と付け加えた。例えば、人間関係や社会活動を維持することが困難になったり、オンラインで不誠実な行動をしたり、不規則な食習慣や睡眠パターンの乱れを経験したりするかもしれない。
研究の上級著者であり、ロンドン大学グレート・オーモンド・ストリート小児保健研究所のデータマネージャーであるアイリーン・リー (Irene Lee) 氏は「若い人たちに対し、日常的なインターネット使用について適切な時間制限を設け、ネットへの長時間のアクセスが心理的・社会的に与える影響について考えるようアドバイスしたいと思います」と述べた。
研究者たちによると、10代の脳は構造と発達のせいで、インターネット依存症関連の衝動の影響を受けやすい。
思春期の脳は、社会的能力と思考能力が大きく変化する。この時期は、社会的合図や仲間とのつながりに対する感受性が高まり、社会的スキルが向上するのを特徴としている。このような変化は、脳の特定の部分における接続性の強さの増加と関連しており、統合が進んでいく。シナプス接続と環境的合図の再編成も、神経ネットワークの形成に関与している。
具体的なメカニズムはまだわかっていないが、研究者たちは、神経ネットワークの活動で観察された変化が、思春期の発達のさまざまな側面に大きな影響を及ぼすことを強調する。
「臨床医は、特定の脳領域を狙った治療を処方したり、インターネット依存症の主要な症状をターゲットにした心理療法や家族療法を提案したりできます。公衆衛生の視点では、インターネット依存症ついて親を教育することが、別の予防手段となります。これは重要です。親にインターネット依存症の初期症状や発症に関する知識があれば、画面を見る時間や衝動性をより効果的に管理し、インターネット依存症を取り巻く危険因子を最小限に抑えることができます」とチャン氏は付け加えた。