アジア・太平洋地域における研究者の底力...2024年高被引用論文著者

2024年12月11日 安 順花(JSTアジア・太平洋総合研究センター フェロー)

クラリベイト社による毎年恒例の高被引用論文著者(Highly Cited Researchers、以下HCR)が発表された。高被引用論文著者(HCR)とは、世界最大級の学術文献データベースのWeb of Scienceに索引付けされた論文を対象として引用回数が上位1%に入る論文の著者を指す。つまり、HCRに選出されたということは、その論文が多く読まれ、後続の研究に大きな影響を与えたということである。

2024年HCRには世界59カ国・地域の1,200以上の機関から6,636人が選出された。そのうち85.4%を上位10カ国・地域が占めており、さらに上位5カ国で74.4%を占めている。

中国・オーストラリア・香港・シンガポールがトップ10入り

表 HCRトップ10の国・地域
順位 国・地域 HCR数 シェア(%) 前年比増減
1 米国 2,507 36.4 −1.1
2 中国 1,405 20.4 2.5
3 英国 563 8.2 0.1
4 ドイツ 332 4.8 0.1
5 オーストラリア 313 4.5 0
6 カナダ 206 3.0 −0.1
7 オランダ 185 2.7 0
8 香港 134 1.9 0.2
9 フランス 126 1.8 −0.2
10 シンガポール 108 1.6 0.1

出典:クラリベイト社

上位1%の高被引用論文著者が多い国・地域(主たる所属機関基準)は上記の表の通りである。米国が2,507人で前年2,669人に比べて減少したものの、シェア36.4%でトップを維持している。しかし、シェアは2019年44.0%から減少し続けている。一方、中国は1,405人でシェア20.4%を占めた。中国は2018年7.9%から着実にシェアを伸ばして、ついに20%を超えた。

トップ7までは前年と同様の順位であるが、香港がフランスを抜いて8位となった。また、シンガポールはイタリアを抜いて初めてトップ10入りした。アジア・太平洋地域ではトップ10入りの中国、オーストラリア、香港、シンガポールのほか、日本78人、韓国75人、台湾12人、マカオ7人、インド5人、マレーシア4人などで多く選出された。

浙江大学・香港城市大学・北京大学は大幅ランクアップ

表 HCR数トップ10の所属機関
順位 機関名 HCR数
1 中国科学院(CAS) 中国 308
2 ハーバード大学 米国 231
3 スタンフォード大学 米国 133
4 清華大学 中国 92
5 米国国立衛生研究所(NIH) 米国 90
6 MIT 米国 76
7 オクスフォード大学 英国 61
8 ロンドン大学(UCL) 英国 60
9 マックス・プランク協会 ドイツ 56
10 カリフォルニア大学サンディエゴ校 米国 55
10 香港大学 香港 55

出典:クラリベイト社

機関別で見ると、中国科学院が308人で最も多かった。その次に、ハーバード大学、スタンフォード大学、清華大学、米国国立衛生研究所(NIH)、マサチューセッツ工科大学(MIT)の順である。前年に比べると、中国清華大学が躍進し、米国NIHを抜いて4位に上がった。

上位50位内のアジア・太平洋地域の機関は14機関である。中国は北京大学、浙江大学、復旦大学、上海交通大学、北京理工大学など7機関、オーストラリアはメルボルン大学、クイーンズランド大学、ニューサウスウェールズ大学の3機関、香港は香港大学・香港城市大学、シンガポールはシンガポール国立大学・南洋理工大学でそれぞれ2機関がランクされた。他方、上海交通大学は新しく50位内に入った。

上へ戻る