筋萎縮性側索硬化症 (ALS) は、死に至る神経変性疾患であり、診断後の平均余命はわずか2~4年である。(2025年9月1日公開)
AIを積極的に活用して筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の治療法開発を促進するために、新たに750万ポンド(約1000万ドル)規模のALSに関する経度賞 (Longitude Prize on ALS) が発表された。ALSは運動ニューロン疾患 (MND) の中でも最も一般的な疾患である。
この賞への応募受付は2025年6月25日から12月3日までである。2026年初頭にまず20チームそれぞれに10万ポンドが与えられ、5年の期間終了後には1チームが100万ポンドを獲得する。
この賞の主な資金提供者は運動ニューロン疾患協会であり、企画・運営はNestaの支援を受けつつチャレンジ・ワークスが行っている。また、世界中から資金援助を受けている。
ALSは致死性の神経変性疾患であり、診断後の平均余命はわずか2~4年とされている。ALSは運動ニューロン疾患 (MND) の中でも代表的なものであり、ALSに罹患すると運動ニューロンからの信号は徐々に筋肉に届かなくなる。筋肉は衰弱し、硬直し、萎縮し、そのため、歩行、会話、飲食、呼吸に影響を及ぼす。
ALSの進行を一時的に遅らせる治療法はわずかながら存在する。だが、この疾患は複雑なものであるため、長期的な治療法や完治させる治療法は存在しない。しかし、AIの進歩により、イノベーターたちが過去10年間に蓄積された膨大な患者データを解析し、この疾患を克服できる可能性が初めて現実味を帯びてきた。
チャレンジ・ワークスのマネージングディレクターである、トリス・ダイソン (Tris Dyson) 氏は「私たちは、今までなかった力を手にしてMND、特にALSの複雑性を解き明かしています。長期治療法の開発は加速され、いつかは治癒に至る道を進んでいると考えています」と語る。ダイソン氏は2023年にALSと診断された。
「ALSに関する経度賞は、これまでで最大のALS患者データセットを集約し、AIを用いて最も有望な創薬標的を特定する研究者に報酬を与えることで、これを可能にします」とダイソン氏は付け加えた。
ALSに関する経度賞は5年制賞である。世界中の学際チームが3段階のプログラムで競い合い、ALSに対する有望な創薬標的を特定し、優先順位をつけ、検証する。創薬を促進するため、この賞は世界中のデータ保有者と協力し、幅広いALSデータセットを集めている。参加者には、これらのデータセットへのアクセス、資金、技術的専門知識、そして様々な追加支援とパートナーシップの機会が提供される。
この賞は、医学研究、バイオテクノロジー、計算生物学、AIの分野から応募を募る。そして提案された手法とチーム構成の両方において高い可能性を示す、最も有望な上位20件の応募を支援しようとしている。チーム構成は、ALS研究と計算生物学を含め、いくつもの分野の専門家が入っていなければならない。
運動ニューロン疾患協会の最高経営責任者であるタニヤ・カリー (Tanya Curry) 氏は「科学とテクノロジーの分野における最も優れた人材を結集させ、権限を与えることでALSに関する経度賞は、運動ニューロン疾患患者に変革をもたらすでしょう」と述べる。
「私たちは主要な資金提供者として投資しています。それは、このような協力関係が実現し、そして私たちが解明しようとしているかつてないほど膨大なデータがあれば、この疾患を理解し、疾患と闘う方法に関する道しるべを作り上げ、重要な創薬、MND協会、さらに広範なMNDコミュニティの役に立つからです」とカリー氏はつけ加えた。
チャレンジ・ワークスは世界が直面する最も困難な課題に対する画期的な解決策を促進するために、経度賞を主催している。ALSに関する経度賞は、2024年に受賞者を発表し成功裏に終わった薬剤耐性 (AMR) に関する経度賞、及び2026年に受賞者を発表する予定の認知症に関する経度賞に続く3番目のものになる。