AI開発者は、ツイストバイオサイエンス社のハイスループットDNA合成プラットフォームを使えば、タンパク質探索に費やす時間を短縮し、治療の可能性を広げることができる。(2025年10月28日公開)

ディープマインド社が開発したAlphaFoldという画期的なシステムは、タンパク質構造予測における人工知能 (AI) の驚異的な能力を実証し、計算生物学における重要なマイルストーンとなった。現在、開発者たちは、AIを用いてタンパク質相互作用を理解し、配列から機能を予測するという、次の局面に向かっている。
しかしながら、AIモデルを作成する開発者の多くは、ウェットラボの専門家ではなく、計算科学の専門家である。このため、知識が足りず、デジタル予測から実験検証への移行はうまくいかない。AIモデルが生成するたんぱく質設計モデルがさらに高度になるにつれ、計算科学の専門家と生物学の専門家を統合させ、知識と技能を共有させることが急務となっている。
バイオテクノロジーのトップ企業であるツイストバイオサイエンス社は、このボトルネックの解消に向けて大きな前進を遂げている。同社は、AI開発者が必要とする形式と規模で高品質かつカスタマイズ可能なDNA合成を確実に提供し、顧客のAIを活用した設計を実験的検証のための物理配列に変換する。
ツイストバイオサイエンス社の新アプリケーションであるSynBioの担当ディレクター、ジュリアン・ジュード (Julian Jude) 博士は次のように説明する。「大きな課題の一つは、タンパク質配列空間の広大さです。優れた機能を持つ酵素や抗体を見つけるのは、干し草の山から針を探すようなものです。AIは候補をスマートに絞り込むのに役立ちますが、真のブレークスルーは、AIが予測したすべての設計を迅速かつ正確に合成し、真に必要なDNAフォーマットで試験できるようになった時に現れます」
例えば、抗体探索では、研究者は多くの場合、優れた候補を特定するために、数千万もの変異体をスクリーニングする必要がある。しかしAIを活用すれば、変異体を数桁削減し、目的の機能を発揮する可能性が最も高い数千の配列にまで絞り込むことができ、創薬計画が加速されると考えられる。
しかし、AIの推算は、開発者がその推算を物理的に検証できる能力を持つ場合のみ価値を持つ。そのため、ツイストバイオサイエンス社は、同社のDNA合成プラットフォームを活用して、製品を製造し、ハイスループット・タンパク質探索ワークフローを支える実験サービスを提供している。
その一つが、Twist Multiplexed Gene Fragments (MGF) である。MGFを使用することで、研究者は最長500塩基対の数千もの遺伝子断片を同時にスクリーニングできる。チューブ1本につき1つの断片を生成する従来の合成方法とは異なり、MGFは変異体のライブラリ全体を単一のプール形式で提供するため、AI設計のタンパク質ライブラリを迅速かつ大規模に試験するのに最適である。
ジュード博士は「MGFは最長500塩基対で、標準的なオリゴヌクレオチドよりもはるかに長く、タンパク質ドメイン全体、あるいはタンパク質全体を扱うことができます」と語る。「重要なのは、MGFは他の合成法では問題となるグアニン-シトシン (GC) 含有量の多さや反復配列といった制約を受けないことです。これは、アルゴリズムによって設計された通りに配列を正確に表現する必要があるAI駆動型のキャンペーンにとって特に重要です」
MGFの技術はTwist Oligo Poolsにより補完される。これは鎖長20~300ヌクレオチドから成り立つ単鎖DNAオリゴヌクレオチドの非常に多様なプールを合成する。これらのプールには数十万もの独特な配列を格納できるため、研究者はペプチドライブラリ、抗体可変領域、または調節エレメントをコード化して包括的なスクリーニング研究を行える。Twist Oligo Poolsは正確に定義された配列の巨大なライブラリを生成するための、費用対効果の高いワンストップソリューションとして機能する。
ツイストバイオサイエンス社は、研究者が必要とする形式でハイスループットかつ高品質なDNAを提供することで、複数の研究分野にわたるAI活用プロジェクトを支援し、研究チームがin silico設計から実験検証へと移行できるよう援助する。
例えば、ワシントン大学ベイカー研究所では、研究チームはAI誘導タンパク質設計ソフトウェアとツイストバイオサイエンス社のMGFの技術を組み合わせ、新しい抗体断片を発見した。このアプローチにより、研究チームは新しい抗体結合剤の設計と検証ができるようになった。ベイカー研究所のチームは別の実験で、Twist Oligo Poolsを使用して、ボツリヌス中毒やインフルエンザを引き起こす病原性因子を中和する新しいタンパク質も設計した。
農業バイオテクノロジーの分野では、ファイトフォーム・ラボ (Phytoform Labs) がTwist Oligo Poolsを活用して数千ものAI設計のDNA配列をスクリーニングし、作物改良を目的として形質工学を効率化した。このアプローチにより、研究リソースを最適化するとともに、耐性の高い食用作物の開発を加速させることができた。
一方、韓国の延世大学校の研究者たちは、大規模なオリゴライブラリーとディープラーニングモデルを組み合わせ、これまでにない精度で遺伝子編集の効率性を予測し、AIと合成生物学が相乗効果を発揮して実際の治療に応用できる可能性を証明した。
AIによる予測と迅速なDNA合成の組み合わせは、生物工学の課題について、スピードと成功率の点で実際のメリットをもたらしている。例えば、今までは抗体探索には通常12~18ヶ月かかった。だがジュード博士によると、AIを活用したアプローチではこの期間を3~6ヶ月に短縮できる可能性を持つ。AI利用の手法を採用している企業は、従来の手法よりも3~4倍高い成功率を報告している。
「AIの予測能力と高速DNA合成を組み合わせることで、これまで数ヶ月、あるいは数年かかっていたプロジェクトが数週間でマイルストーンに到達できるようになります」とジュード博士は語る。「顧客はさらに広い設計空間を探索し、さらに困難な課題 (例えば「創薬困難な」標的に対する結合剤の発見や新規化学反応を起こす酵素の探索など) を解決できます。AIが創造的な解決策を提案し、当社のプラットフォームがそれを構築できるからです」
高精度でハイスループット手法を使うDNA合成への需要は今後ますます高まっていく。ツイストバイオサイエンス社は積極的なアプローチを取り、AIを活用する研究の進化するニーズに応えるため、継続的に能力を拡大している。同社のビジョンは、AIと合成生物学が連携して機能する自動探索システムへの幅広い潮流に乗ったものである。
「研究コミュニティとの緊密な対話を維持し、先見性のある研究に投資することで、ツイストバイオサイエンス社はトレンドに反応するのではなく、トレンドを創出することを目指しています。AIがバイオ医薬を変革するこの時代において、当社は研究者がAIの可能性を最大限に引き出し、より優れた医薬品やバイオテクノロジーソリューションを開発できる橋渡し役になりたいと考えています」とジュード博士は答えてくれた。
ツイストバイオサイエンス社の一部門であるツイストバイオファーマソリューションズは、抗体探索および最適化プラットフォーム全体にAI機械学習技術を統合していることから、AIが生物学的製剤の創薬に変革をもたらすよい一例となっている。同部門は、AIを活用して事前に定義された標的エピトープに特化した完全ヒト型配列が豊富に含まれる抗体レパートリーを生成することで、抗体探索キャンペーンの成功率を高めている。また、AIを使うことで、抗体ヒト化期間と親和性成熟の期間を5ヶ月から6週間へと、3分の1に短縮することができた。
ツイストバイオサイエンス社は、このようなAI利用の手法を補完して、包括的な開発可能性や免疫原性プロファイリングを含めた、ハイスループットの抗体製造及び特性評価機能を提供している。これにより、有力な候補は強力であるだけでなく、下流の治療薬開発にも適していることが保証される。