アジア地域への科学技術の世界的重心のシフト

世界の科学の重心はアジアへシフトし、現在の予測では、これはおそらく長期的につづくと予測。

Asian Scientist - 「これからアジアの世紀が始まる」というのは、世界経済の主要転機を予測したThe Financial Times (ファイナンシャル・タイムス)の2019年の見出しであった。全世界で猛威を振るう新型コロナウィルス感染症「COVID-19」のパンデミックにありながらも、アジアの経済生産量は、19世紀以来初めて、世界の他地域を合わせた量より多くなることが予想されている。

歴史家は、過去200年あまりを人類の歴史上の一瞬の閃光のようにとらえるようになるだろう。この期間は西洋が、啓蒙主義、産業革命、それに伴う植民地事業のおかげで経済的優位に立っていた短い歴史である。

20世紀の製造拠点としてのアジアの再浮上は、戦後まず日本そして韓国で起こり、最近は中国、インドに移っており、これらの地域の成長を支えてきた。香港、深セン市、シンガポールを含む今日のこれらの地域で最も発達した都市は、グローバルなイノベーションネットワークにおけるサービス・知識経済の最先端をいく。

アジアの多くの国には、ハードサイエンス分野への政府の膨大な投資と共に、この分野に対する協力的な社会的・文化的環境が存在する。アジアの一流の科学者たちは、マラリヤ治療に使用するアルテミシニンの発見およびリチウムイオン電池の発明などのイノベーションによって、人類の発展の基盤を確立した。

今日、科学者たちにとって、この地域の魅力は、アジアの未来的な社会と慣習が古代のものと併存するという事実にみられる、本当の意味での多様性ではないかと思われる。

人口構造の変化を考えてみよう。アジアの人口は20世紀には4倍にも膨れ上がり、45憶人以上、世界総人口の約60%を占める。2030年までには、さらに2億5千万人もの増加が予想されている。矛盾しているように思われるかもしれないが、この時代のアジアは若くありながら同時に高齢ともなる。地域としてみた場合、アジアは世界の15歳から24歳までの人口の半分を抱え、インドは世界で最も若い国となり、中国、日本、タイなどは、著しい数の高齢者を抱えた国となるであろう。

多くのアジア人が通常の市街地だけでなく、超巨大都市にも居住するようになる。アジアは、世界の中流階級の半分を抱える。糖尿病などの第一世界の疾患が著しく増加する一方で、アジアには、全世界総計の半分以上である5億人もの栄養不良者が存在する。

したがって、アジアの研究者たちは、世界で最も豊かで進んだ保健システム(例えばシンガポール)と、最も貧しく未発達の保健システム(例えばラオス)が両方存在する地域で、伝統と近代性の均衡をとる努力をしている。

環境保護についても考えてみよう。アジアにおける前例のない最近の人口増加、所得の伸び、都市化は、この地域の農業や環境の基盤に固有のストレスをかけている。スモッグでかすんだ都市、感染症に悩まされる汚染された河川や農地は、アジアの「奇跡」の中で嫌というほど聞かされる汚点である。

しかし、アジア諸国はこの厳しい現実に直面し、素早く、環境保護におけるグローバルなリーダーとなった。たとえば、中国における太陽光による発電や、日本における電気自動車の普及などである。

このようなさまざまな矛盾と課題ゆえに、アジアは非常に刺激的であるともいえる。

以下のインフォグラフィックスでは、Asian Scientist 100で表彰されたアジアにおける一流の科学者の分布を示している。

これらの情報により浮き彫りになることは、明らかに世界の経済および科学の重心がアジアにシフトしているということである。現在の人口動態および経済予測を考慮すると、この傾向はおそらく長期的に続くこととなるだろう。

参考:Asian Scientist Magazine(外部サイト) Five Years Of The Asian Scientist 100 https://www.asianscientist.com/as100whitepaper/

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