アジアで第4次産業革命の先駆け 物理・デジタル・生物学が交差

物理・デジタル・生物学の領域が交差するエリアの研究に取り組むことで、アジアのエンジニアらは第4次産業革命の先駆けとなっている。

AsianScientist - アジアには工学研究とイノベーションの長い歴史がある。中でも、古代中国は高炉や羅針盤を世界に広め、インダス文明は四千年以上も前に水理工学や衛生技術を世界に先駆けて開発した。

現代アジアの工学に関わる先駆者たちは、同地域の都市部や農村部での生活の質を高めるため、今なおたゆまぬ努力を続けている。彼らの画期的な研究のほとんどは第四次産業革命の一部をなす技術を中心に行われている。これは、比較的視野の狭い環境で研究していた先人たちとは異なり、工学における今日の先駆者たちは物理的、デジタル的、生物学的な領域が交差するエリアの研究に取り組んでいることを意味している。

例えば、優遇政策の下で消費者による熱心な普及が進んだことにより、アジアはロボティクスやドローンの領域で急速に世界をリードするようになった。研究機関のIDCは、日本を除くアジア太平洋地域において、ロボティクス、ドローン、および関連サービスへの支出額が、2022年までに2018年の3倍にあたる1294億米ドル(約14 兆円)に達すると予想している。

掃除機や芝刈り機を含む家庭用ロボットもアジアで普及が進んでおり、公共空間ではロボットが空港のパトロール、病院や介護施設での医薬品や医療機器の運搬、フードセンターでのトレイの返却の支援などを行っている。その一方で、非営利団体のVattikuti財団は、2020年までにインドで200体もの手術用ロボットを設置し、ロボットによる支援を伴う手術を20,000件以上完了させることを目指している。s

ソーシャルロボットは、自宅から受付カウンターまで、あらゆる場所で人と人との交流を模倣できるようになりつつある。2015年には、韓国初のヒューマノイドロボットHUBOが[DARPAロボティクス・チャレンジ]で優勝している。身長180センチ、重さ80キログラムのHUBOは、二足歩行モードと車輪モード、半自動型の操作制御システム、180度旋廻可能なボディを備えている。ドアを開けたり、階段を上ったり、さらには5本の指を使ってジェスチャーすることもできる。

HUBOは、韓国科学技術院 (KAIST) のオ・ジュンホ (Oh Jun-Ho) 教授によって考案された。同教授は、ヒューマノイド型と比較して安価で使いやすく、人間と一緒に作業するように造られている「コボット (cobot) 」 (協働型ロボット) の研究でも知られている。同教授は今後、アジアで高齢化が進むにつれて需要が高まるとみて、高齢者や障害者らを支援する役割をロボットが担うことを想定している。

ドローンも同様で、アジア各地で意欲的に普及していることは同地域の多様性を如実に表している。中国では、日中の公害監視や夜間の法執行のためにドローンが役立っている (夜間の場合は熱探知カメラを使用) 。インドのラクナウ市では、市警察がトウガラシスプレー散布用ドローンを4機所有している。また、同国の別の地域では、人を殺したトラの追跡にドローンが役立っている。

日本の研究者らは、気球を使った無人航空機により、南極上空22キロメートルの大気中の粒子を採取している。マレーシアでは、アブラヤシ農園の作物の調査から熱帯雨林の奥地でのマラリアの追跡まで、あらゆる場面でドローンが活躍している。

このような状況で、世界的に有名になり、予想に反して民間人用ドローン市場の4分の3を占めるまでに至った中国のブランド、DJIが群を抜いている。DJIは、2006年にフランク・ワン(Frank Wang)氏が香港大学の科学技術寮の一室から立ち上げた会社である。

2015年には、液体型の農薬、化学肥料、殺虫剤を作物に精密に散布するために設計された同社初の農業用ドローンを発売した。今日、DJIは世界のドローン市場の約70%を占めており、時価総額は200億米ドルを超えている。

また、アジアでは大都市の大気汚染対策が主な動機となり、ガソリン駆動型の自動車から電気自動車や燃料電池車への移行が世界に先駆けて進んでいる。例えば深センでは、16,000台を数えるバスを全て電気自動車に切り替えている。バンコクも国内の運河で電動フェリーの試運転を行っている。

一方で、韓国では水素電池自動車の普及に力を入れており、2030年までに85万台を走らせる計画を進めている。これには、現代自動車の未来革新技術センターのイム・テウォン(Lim Tae-won)所長による先駆的な取り組みが貢献している。

イム所長は、自動車に搭載可能で低価格な水素燃料電池を開発した。現在はモビリティ産業全体のために、持続可能性の高い新素材の開発に力を入れている。

同地域におけるもう一つの興味深い領域がAI(人工知能)、ビッグデータ、ブロックチェーンIoT(モノのインターネット)などの開発と普及であり、特に「スマートシティ」の分野で関心が高まっている。

アジアの第4次産業革命における急速なエンジニアリングの進歩に対する懸念もあり、それはAIの倫理的な使用や、政府と市民の交流が急速に進化している中での監視の強化-などがある。自動化による雇用の置き換えについても不安の声が上がっている。

しかし、アジア開発銀行が2005年から2015年にかけてアジアの途上国12カ国を分析した研究によると、工場やオフィスにおける最新の機械ツールやコンピュータシステムは、生産性と成長を刺激することによって1億3400万人もの新規雇用を創出し、同期間に技術によって失われた1億100万人の雇用の問題を容易に解消している。

ホワイトペーパー「Five Years Of The Asian Scientist 100」(外部サイト)

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