上位100校にアジアの16大学選出 2021年のTHE世界大学ランキング

アジアのトップ大学が研究や産業の指標を向上させ、2021年の世界大学ランキングでさらに順位を上げている。

AsianScientist - 英教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)」の2021年世界大学ランキングにおいて、上位100校にアジアの16大学が選ばれるという歴史的快挙が達成された。昨年は12校であったが、アジアのすべての大学がランキングを上げた。今年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行前と流行の最中の大学データを収集した点が特徴的である。

THEは、世界の大学を評価するだけでなく、特定の地域や専門分野にも焦点を当てている。例えば、分野ランキングでは、さまざまな学問領域における大学の業績に関するデータが提示されている。2021年アジア大学ランキングでは、世界ランキングの評価基準を再調整し、各地域に固有の高等教育目標がよりよく反映されるようになっている。

世界ランキングではアジアの国や大学は依然として少数で、上位の大学とそれ以外の大学の間にはスコアで大きな開きがある。しかし、この地域のリーダーとなる大学はその存在感を示しており、さらに多くのアジアの大学が世界の舞台で活躍する道を切り開いている。

2021年の世界ランキングにおけるアジアの大学の注目点を以下に紹介する。

1. アジアの中では中国がリード

これまでは米国と英国の大学が独占していたTHEの世界ランキングトップ20に、アジアの大学が初めてランクインした。中国の清華大学は、2020年から順位を3つ上げ、米国のデューク大学に並ぶ20位にランクインし、高等教育における地域および世界のリーダーとしての地位を固めた。

アジアの大学で中国の大学が1位を獲得しただけでなく、上位100位以内に6校の大学をランクインさせ、アジアで最も多くランクインした国にもなった。6校という数字は昨年の2倍であり、201〜300位台だった3つの大学が世界のトップ100に躍り出たことによるものである。この上昇は、アジアの大国が学術部門における世界的強国に着実に成長していることのもう一つの証となっている。

2. 地域のリーダーは引き続き上昇

アジアのトップレベルの大学は、動きに一貫性がある。こうした大学は、一度トップに立つと、めったに順位が下がらず、世界のトップの座を確保しながら業績を向上させる方法を模索する。

中国と並び、トップ200に7つの大学をランクインさせたのが韓国である。世界ランキングで韓国トップの座を占めるソウル大学校は、昨年の64位から60位にランクアップした。

同様の上昇をみせたのが日本の京都大学で、昨年の65位から54位と9つ順位を上げた。一方、東京大学は36位、シンガポール国立大学(NUS)は25位をそれぞれキープしている。

3. 分野ランキングで光る日本

今年、"日出ずる国"はこれまでで最高の業績を収め、東京大学はアジア大学ランキングで6位となった。より安全な抗生物質の発見などのトランスレーショナルリサーチをリードする東京大学は、STEM分野のランキングでもトップ100に入った。

臨床および健康分野では、京都大学が24位、東京大学が27位にランクインし、18位のNUSに次ぐアジアで2番目と3番目に優れた業績を収めた。両大学は物理分野でも優れた業績を上げ、生命科学分野では、大阪大学を含めた3校がランクインした。

4. コンピューターサイエンスで際立つアジア

中国とシンガポールを筆頭に、アジア地域はテクノロジー分野が発展している。NUSはコンピュータサイエンスで8位、北京大学はエンジニアリングで9位と、両国とも専門分野で輝かしいトップ10入りを果たした。

ランキング全体を眺めると、他のアジア諸国も波乱を起こしている。例えば、インド理科大学院は、エンジニアリング分野で94位、コンピュータサイエンス分野で96位にランクインした。さらに、エンジニアリング分野で上位にランクインした大学では、香港の5校、韓国の6校、中国の10校など、アジアの大学が実に30%を占めている。

こうした傾向は、あらゆる業界で技術人材に対する需要が高まっていることを反映している。そのため、大学は安定した人材の供給と関連する研究 (あらゆる形状およびサイズ物体をつかむロボット装置の開発など) によってこの分野を活性化させている。

5. 上位の大学が研究のインパクトおよび産業界との連携を推進

ランキングに見られるように、研究と産業関連の指標は、大学の業績を高める重要な要素である。トップ100の大学では、さまざまな業績属性が比較的均等に分布しているが、101~200位台のアジアの大学では、研究の引用数と産業収入とが、教育など他の基準よりも顕著に高くなっている。

世界ランキングでアジア3位の座をキープしたNUSは、研究業績で最も成功を収め、スコア90点を獲得した。同大学の産業収入も20ポイント近く上昇して80点弱となり、他の属性における低下を補った。一方、台湾大学は、主に研究と引用インパクトのスコアが向上したことより、120位から97位に上昇して世界トップ100に初めてランクインした。

THEのランキングに登場したアジアの大学が最終的に示すのは、的を絞った取り組みがいかに大学の業績を高めるかということだ。最大の利益は、主に地域に影響を与える広範な研究活動を追求することを通じてもたらされている。

アジア主導の研究の規模と範囲とを拡大するには、国際的な連携もカギとなる。例えば、中国の研究機関は米国との協力関係を強めているが、そのことはランキング全体における躍進に表れている。

これらの指標は数字以上のものであり、教育政策や成長に向けた大学の取り組みを導く指針にもなる。このランキングから手がかりをつかむことで、さらに多くのアジアの大学が世界の舞台で活躍できるようになり、アジアの高等教育の水準向上につながる。

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