マスクせず呼吸するだけで唾液の飛沫が2.2メートルも移動 米韓らの研究者

マスクを着けずに室内で通常の呼吸をした場合、ウイルス粒子を運ぶ唾液の飛沫が90秒間で約2.2 メートル先まで移動するという研究結果が、6月8日、AIP Publishingが発行するジャーナルPhysics of Fluidsに掲載された。

米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校(Stony Brook University)、スイス連邦工科大学チューリヒ校(Swiss Federal Institute of Technology)、韓国の漢陽大学校(Hanyang University)の研究者らが、コンピューターシミュレーションを用いた研究により明らかにした。

米国の疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)が他人との間に確保すべき距離は1.8 メートルで、今回の研究ではそれでは不十分ということになる。ちなみに、マスクを着用した場合には、飛沫は約2分間で0.72 メートルしか移動していなかった。

くしゃみや咳による飛沫の移動を調べたこれまでの研究と異なり、今回の研究では、通常の呼吸に注目してシミュレーションを行った。その結果、呼吸のたびに口から唾液の飛沫を含む噴流が吐き出され、複雑な渦度場(vorticity field)を形成することが分かった。マスクをすることでこの渦が壊され、飛沫の動きが制限される。

また、空気が停滞した室内では、水分が蒸発して10分の1ミクロンまで小さくなった唾液の飛沫が数日間空気中に漂う可能性があるが、マスクの着用によりこのリスクも大幅に軽減できるという。

論文著者の一人、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校のアリ・コスロネジャド(Ali Khosronejad)氏は、今回は口からの呼吸のみを対象としたが、今後は鼻からの呼吸の効果も検討したいとしている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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