トヨタ自動車の北米先端研究所(Toyota Research Institute of North America)、韓国、米国の研究者による研究チームは、光学的な手法を用いて覆った物体を見えなくする「クローク(cloak)」技術の開発状況に関する論文を発表した。論文は6月15日、Journal of Applied Physicsに掲載された。このクロークは過去20年にわたって研究されており、自然のインコヒーレント光の中で機能し、通常の光学部品で構成される。
光学的な「クローキング(cloaking)」とは、物体を覆い、その周りを迂回するように光を導くことで不可視化する技術である。姿を隠す技術は『ハリー・ポッター』シリーズの「透明マント」のようにフィクションの世界で好んで用いられてきた題材だが、近年、物体の周りの電磁放射の流れを制御することで、これを実現する技術の研究が進んでいる。
不可視化クロークに関するこの研究では、フロントガラスの柱によって生じる死角について検証しており、著者の一人、デバシシュ・バネルジー(Debasish Banerjee)氏は、「柱が透明に見えるよう、柱の周りを光に迂回させることができるか」について研究している。
また、位相関係を保持できるように物体の周りの光学素子を最適化することが課題となっている。
この技術は、軍用のセンシング・ディスプレイ機器や監視機器、宇宙関連、効率的な太陽電池の開発等、さまざまな領域での応用が期待されている。今後、急速に発展している人工知能(AI)を用いた設計や付加製造技術により、近い将来、あらゆる入射角と広い視野に対応するクロークが開発され、低コストかつ効率的に大量生産できる可能性があるという。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部