米中対立による国際共同研究への影響を分析 米大学研究機関

米ジョージタウン大学ウォルシュ外交学院(Georgetown University's Walsh School of Foreign Service)の政策研究機関である安全保障・先端技術研究センター(CSET)は、科学技術に関する米中の対立が国際的共同研究に及ぼす影響を分析する記事を公表した。発表は6月24日付。

米国および中国と共同研究を行っている研究者は世界中に存在し、2国間の対立が深まれば、今後の技術革新において重要なこうした協力関係にもほころびが生じる可能性がある。 研究への注力度の指標となる論文発表数は1999年には米国が圧倒的首位だったが、CSETが最近発表した報告書と英科学誌Natureの分析によると、2019年には次のような変化が生じている。

  • 一強体制ではなく、中国、米国、欧州連合(EU)がそれぞれ異なる領域のリーダーとなっている。EU、インド、日本、韓国等の米中以外の国による論文数が世界の論文数の3分の1を占める。
  • 米国と中国の間の共同研究活動はやや減速傾向にある一方で、英国や豪州等、米国以外の国と中国の共著論文数は増えている。
  • 3カ国以上の国際共同研究は増加しており、特に豪州等の国で活発に行われている。

6月8日に米上院を通過した「米国イノベーション競争法案」でも、知的財産権の侵害等への対処を目的とした国際共同研究への監視強化に関する条項が含まれており、共同研究の抑制につながることを懸念する声もある。

上記のような分析は、今日の科学界の相互連携性を改めて確認するものである。米オハイオ州立大学(Ohio State University)で国際共同研究について研究するキャロライン・ワグナー(Caroline Wagner)氏は、米国を国際的な関係性から分断することは不可能であるとしながらも、生物科学や量子材料等の一部分野では、慎重かつ戦略的な共同研究先の選択が必要になる可能性があるとの見解を示した。

米中対立をめぐる共同研究への動きとして、先進7カ国(G7)では「オープンで相互的な共同研究」を守るための作業部会が設置されている。EU諸国では米中のどちらも選ばず独自のエコシステムを形成しようという気運も高まっている。また、米国と安全保障上の同盟を結ぶ一方で、科学分野では中国とも活発に連携している豪州の動向も注目される。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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