エンジニアリングの「顔」を変えるアジアの女性たち

国際女性エンジニアリングデー(6月23日)を祝して、科学賞などを受けたフィリピン、スリランカ、バングラデシュの3人の優れた女性エンジニアを紹介する。

AsianScientist - 海軍の発光信号、ケブラー、ワイパーに共通するものは何であろう?  それらはすべて、先駆的な女性エンジニアによって発明され、特許を取得したものだ。今日、エンジニアリングや科学においてキャリアを追求する女性の数はまだ少ないものの、全般的に見ると増加している。

たとえば、日本では、エンジニアのうち女性はわずか5%であり、世界で最も大きな男女格差の1つとなっている。しかし、科学技術振興機構(JST)の渡辺美代子副理事のような指導的女性や同機構のような主要な研究機関が多様性を支援し、女性数の増加を推進しているため、この数は変わってくると予想されている。他のSTEM分野と同様に、この顕著な男女格差にはさまざまなことが考えうる。家族の義務、疎外感、資金の格差はすべて潜在的な原因である。しかし、科学者、研究者、エンジニアとして後を継ぐ者たちは、そのようなハードルを乗り越えることについては優れている。今回の特集は、アジアの科学者100人に選ばれたエンジニアのうち、科学賞を受け、地域で活躍している以下の3人の科学者を紹介する。環境システムからナノエレクトロニクスに至るまで、女性はエンジニアリングの世界をあっという間に席巻しつつある。

1. アナベル・ブリオネス(Annabelle Briones)博士:デング熱を撲滅し、変化を導く

現在、フィリピンの科学技術省産業技術開発研究所(DOST-ITDI)の所長であるアナベル・ブリオネス博士は、効果的な殺虫・殺幼虫の蚊取り器を開発したことでおそらく最も有名である。 一見シンプルな蚊取り器は、コショウから作られた斬新な溶液を底に入れた黒いカップのみで構成されている。蚊は蚊取り器の暗い環境に引き寄せられ、蚊が産んだ卵はすべて溶液中で殺される。蚊取り器はいくつかの地域で非常に成功したことが証明された。レイテ島では、デング熱の症例が190人からわずか3人に減少した。独創的な設計により、ブリオネス博士は2020年のグレゴリオ・Y・ザラ(Gregorio Y.Zara)応用科学研究賞を受賞した。

受賞した蚊取り器に加えて、ブリオネス博士は最近、ココナッツ油バイオディーゼルの副産物であるグリセリンの回収と精製に関する研究を発表した。ブリオネス博士は、 バイオディーゼルから水層を分離して処理することにより、廃棄物となるはずだったものを効率的に精製して、化粧品業界、食品業界、加工業界で使用できる貴重な製品にすることができた。

2. チャンピカ・エラワラ・カンカナムゲ(Champika Ellawala Kankanamge)博士:生態学的変化のエンジニアリングを行う

熟練したエンジニアであり熱心な環境科学者であるチャンピカ・エラワラ・カンカナムゲ博士は、水界生態系の保全と汚染防止方法の有効性を評価する。

2020年の開発途上国若手女性科学者OWSD-エルゼビア財団賞の受賞者の1人であり、スリランカのルフナ大学の教授であるカンカナムゲ博士の研究は、河川の侵入種を抑制し在来植物を復元することに焦点を当てている。

カンカナムゲ博士は、いくつかの異なる条件で侵入種と在来植物の競争力を研究することにより、生態系の劣化を遅らせ、生息地の繁栄を促進したいと考えている。

カンカナムゲ博士は、地域社会に利益をもたそうと、スリランカのバッティカロア・ラグーンの魚介類に含まれる重金属の量の調査も行っている。川は住民にとって魚介類の供給源であるため、カンカナムゲ博士の研究は汚染を減らす可能性のある解決策の基礎を築くことになる。

3. サミア・スブリナ(Samia Subrina)博士:小さな材料を使って大きな進歩を遂げる

サミア・スブリナ博士も、同じく2020年の開発途上国若手女性科学者OWSD-エルゼビア財団賞の受賞者の1人である。現在、バングラデシュ工科大学の教授であるスブリナ教授の研究は、ナノ素材の特性がナノスケールの機器に与える影響を明らかにしている。

スブリナ博士の研究はさまざまなアプリケーションや環境の中でのさまざまなナノ素材を調べ、ナノスケールの電子機器の開発の基礎を作り上げている。

祖国への恩返しを考えているスブリナ博士は、ナノ素材が再生可能エネルギーの生成にどのように役立つかについても調査している。バングラデシュではナノテクノロジーが依然としてあまり研究されていないことから、国の主要な専門家の1人としてスブリナ博士は、典型的な男性優位の分野で引き続き責任を負い続けている。

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