台湾の陽明交通大学(NYCU)が6月10日、絶滅の危機に瀕しているタイワンオオコウモリ(Formosan flying fox)のゲノム情報を解析し、個体数減少には人間が大きく関与しているという見解を発表した。研究論文は科学誌Journal of Heredity に発表された。
写真提供:陽明交通大学
同大学の生命科学科およびゲノム科学研究所の可文亞(Wen-Ya Ko)博士が率いる研究チームは、琉球大学、沖縄こどもの国の日本チームのほか、台北大学、台湾の固有種研究所(Endemic Species Research Institute)の研究者らの協力を得て、タイワンオオコウモリ3頭と、タイワンオオコウモリの近縁種で琉球諸島に生息するオリイオオコウモリ(Orii's flying fox)4頭のサンプルから十分な数の遺伝子バリアント(genetic variants)を取得することに成功した。
ゲノムデータを解析したところ、緑島のタイワンオオコウモリの有効個体数(effective population size)は28年前に2,324頭から223頭に減少し、タイワンオオコウモリによる生息地の移動よりも、人間による乱獲や生息環境の喪失が大きな原因であると推定された。
一方、琉球諸島のオリイオオコウモリの個体数は数千年前に2,110頭から9,547頭へと約5倍に増加し、現在も比較的安定している。可博士によると、これら2つの種の個体数はかつて同程度だったと推定される。可博士によると、タイワンオオコウモリが絶滅寸前の状況になった原因は、琉球では比較的少なかった「人間による脅威」であることは明らかだという。
今回開発された手法は、サンプル採取が困難な他の絶滅危惧種の研究にも応用できる可能性がある。
本研究は台湾の科技部(Ministry of Science and Technology)と行政院農業委員会林務局(Forestry Bureau, Council of Agriculture)の支援を受けた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部