ALSの発病に代謝障害が影響 台湾師範大学、AIで解析

台湾師範大学(National Taiwan Normal University)は7月1日、ビッグデータと人工知能(AI)の機械学習を用いて筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis: ALS)とその診断前に生じた合併症との関係を解析し、代謝障害がALSの発病に影響する可能性を示した研究論文を発表した。

この論文は「AI医学者(AI Medical Scientists)」シリーズと名付けられた一連の論文の第1弾であり、同様の解析プログラムを用いて遅発性アルツハイマー病等の疾患も研究されている。

疾患の原因を解明するうえで合併症は有用な情報となる。本研究は、原因不明の致死的疾患であるALSと関連する疾患を、医療データベースを用いて解析した。

国民健康保険研究データベース(National Health Insurance Research Database)と重度障害性疾患のデータベース(Serious Disabling Diseases database)を使用して2007年1月1日から2013年12月31日までに新たにALSと診断された15歳超の患者705名と対照群1万4,100名の対照群のデータを抽出し、母集団全体を対象とした症例対照研究を実施した。ALSの初回診断の1、3、5、7、9年前の各期間に診断された疾患と、ALSのリスクを条件付きロジスティック回帰とステップワイズ変数選択を用いて解析した。さらに、パス解析を用いてこれらの疾患とALSの関係性を評価した。

その結果、 ALS初回診断前に診断された28の疾患がALSと関連付けられた。パス解析により、負の相関(negative associated)にある11の疾患が糖尿病及び糖尿病の合併症に、正の相関(positive associated)にある17の疾患がメタボリックシンドローム、神経炎症、頭部外傷等にそれぞれ分類できることが分かった。 結論として、ALSの診断より前に代謝異常が生じるという仮説を裏付ける結果となった。代謝障害がALSの罹患率に影響する可能性があり、ALSの発病にエネルギー代謝障害が関与している可能性も考えられる。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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