気候変動の影響を受けるインド洋の水循環を検証 米ウッズホール海洋研究所

米国のウッズホール海洋研究所(マサチューセッツ州)の海洋物理学者らは7月20日、気候変動の影響が著しいインド洋の水循環について、「インド洋における熱と淡水の変化(Heat and freshwater changes in the Indian Ocean)」と題する研究を発表した。論文は国際学術誌 Nature Reviews Earth & Environment に掲載された。

インド洋の海水温はここ50-60年の間、人間活動に起因した気候変動の影響を受けて他のどの海域よりも上昇している。しかし、こうした人為的な原因による水循環の変化を説明することは簡単ではない。インド洋の水循環の理解を難しくしている要因は、自然の変動、観測データの不足、気候モデルの不確かさ、隣接する海域の複雑な水循環などが関わっていると考えられる。

発表された論文では、インド洋の気候変動を理解する上でキーとなる問題について、さまざまな専門知識や解析テクニック、観測データでアプローチしている。

筆頭著者のカロリン・ウマンホーファー(Caroline Ummenhofer)研究員(准教授相当)は、インド洋の水循環研究の今後について、「各分野の科学者が集まって、私たちのデータからどのようなことが言えるのか、広く議論することが必要だ」と話す。共著者の一人であるカリフォルニア大学サンディエゴ校スクリプス海洋研究所のジャネット・スプリントール(Janet Sprintall)研究員はインド洋の水循環の理解を深めるためには、「気候モデルに頼るのではなく、表層や亜表層の温度や塩分、海水面の観測データを含む、異なる観測データを数多く見ていく必要がある」と指摘する。

著者らは、インド洋の熱と淡水のバランスを定量化するには、現場観測や数値モデル、古環境指標などを用いて多面的にアプローチをしていくことが必要であると唱え、さらに人為的な原因による変動と自然の変動の影響を紐解くには、今ある海洋観測体制の維持と拡大が重要であると考えている。

インド洋で見られる海洋環境の変化は、今後、他の海洋でも起こり得ると予想される。「インド洋は(危険の前兆を知らせる)炭鉱のカナリヤです」とカロリン研究員は警鐘を鳴らしている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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