台湾大学(NTU)が、15年以上にわたるピロリ菌(Helicobacter pylori)の検査・除菌プログラムにより、胃がんの罹患率を低下させることに成功したと発表した。研究の成果は医学ジャーナルGutに掲載された。
ピロリ菌は慢性胃炎を引き起こし、胃がんのリスクを上昇させる。ピロリ菌の除菌には粘膜や遣伝子の損傷を食い止め、胃がんを予防する効果があると考えられているが、有益性やリスクに関する長期的なエビデンスが存在しないため、政策レベルでの実施には至っていなかった。
NTUの研究チームは2004年、ピロリ菌感染率と胃がんの罹患率が高い馬祖列島で胃がん予防プログラムを開始した。4つの行政区の住民に対してピロリ菌の有無を調べる呼気検査を実施し、陽性となった住民に、抗生物質による除菌治療を1クールまたは2クール行った。
このプログラムを計6回実施したところ、ピロリ菌感染率は64.2%から15.7%に減少し、胃がんの罹患率も53%低下した。傾向に基づく分析により、2023年までに、調査対象地域で胃がんと診断される人の数は10万人あたり6人未満になり、2025年までに胃がんによる死亡率は39%有意に低下すると予想されている。
15年以上にわたる研究の結果、ピロリ菌の集団検診・除菌が胃がんの罹患率を効果的に低下させることが示された。さらに、長期間にわたる参加者の追跡調査により、抗生物質の投与によるディスバイオシス(細菌叢のバランスの乱れ)の影響を受けやすい食道や大腸等の消化器官に発生するがんの罹患率も増加していないことも分かった。
この研究は台湾科技部(Minister of Science and Technology)とNTU付属病院の支援を受けて実施された。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部