腎線維化の予防・治療で「TXNDC5」の役割を発見 台湾大学

台湾大学(NTU)の研究チームは、腎線維化においてチオレドキシンドメイン含有タンパク質5(thioredoxin domain containing 5: TXNDC5)が重要な役割を果たすことを発見した。この研究は同大学薬理学部・大学院の准教授であるカイジェン・ヤン(Kai-Chien Yang)博士らが行い、研究の成果は科学誌Journal of Clinical Investigationに掲載された。

慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)患者に多く発生する腎線維化は、腎機能を徐々に低下させ、透析や腎臓移植が必要な末期の腎疾患を引き起こす。今回の発見は、腎線維化やCKDの患者の治療に光明をもたらす可能性がある。

ヤン博士の研究チームは、2018年と2020年に、TXNDC5が心臓や肺の線維化を加速させることを発見した。今回の研究では、TXNDC5がI型TGF-β受容体の折りたたみ(folding)と安定性を高め、線維化を促進するTGFβ1のシグナル伝達を増強させることを発見した。

CKD患者の腎臓内ではTXNDC5の発現が大幅に増加(upregulate)することが分かった。さらに動物実験の結果、コラーゲンを産生する線維芽細胞からTXNDC5を取り除くことで、腎臓の線維化を抑えるだけでなく、既に生じている線維化を軽減できることが示された。

ヤン博士らは引き続き、心臓、肺、腎臓等の線維化に対するTXNDC5を標的とした有効な治療法を研究し、長期的な目標は、線維化からの回復を可能にする医薬品を開発することだとしている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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