東アジアに特化した糖尿病の健康アウトカム評価モデルを作成 スタンフォード大

米スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)は糖尿病と糖尿病予備軍に対する政策や治療計画の経済性を評価するため、中国人をはじめ東アジアの人々に特化したシミュレーションモデルを開発したと発表した。発表は7月13日付。論文は医学誌 PLOS Medicine に掲載された。

近年、アジア太平洋地域での糖尿病患者数の増加は著しく、なかでも中国は世界の糖尿病患者の4分の1を占める1億1,600万人の成人患者を抱える。

糖尿病とその合併症を原因とする健康面および経済面の結果(アウトカム)を評価することは、健康に関する政策の形成に不可欠である。だが、欧米人のデータを基に作成された既存の評価モデルは、東アジア人の評価には適さない可能性がある。さらに、既存のモデルは糖尿病のみを対象としており、糖尿病予備軍を考慮に入れていない。

こうした問題に対処するため、APARCのカレン・エグルストン(Karen Eggleston)博士らの共同研究チームは、東アジア人における2型糖尿病と糖尿病予備軍の生涯的な健康アウトカムを予測する患者レベルのシミュレーションモデルを開発、検証した。

研究チームはまず、香港の2型糖尿病患者と予備軍9万7,628名のデータを使用して、死亡、細小血管及び大血管合併症、糖尿病の発生等の13項目のアウトカムから成る包括的なモデル「中国香港統合モデリング・評価(Chinese Hong Kong Integrated Modeling and Evaluation: CHIME)」を作成し、英国および米国・カナダの既存のモデルと比較した。

次にこのモデルを、中国全土の45歳以上の国民を対象とした「中国の健康と退職後生活に関する縦断研究(China Health and Retirement Longitudinal Study: CHARLS)」のデータや、複数の臨床試験のデータから取得した評価項目に対して検証した。

検証の結果、今回対象としたデータに関しては、英国および米国・カナダのモデルよりCHIMEモデルの精度が優れており、中国人および東アジア人の糖尿病の進行とアウトカムを予測するツールとしてCHIMEモデルが有効であることが示唆された。

この新しいモデルは、医師や医療経済学者、政策立案者が、糖尿病と予備軍に関する人々の健康状態や長期的な治療計画、政策を評価する際に役立つと期待されている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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