持続可能性を支え、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するために、アジアの政府と研究者は協力して研究の方向性を集中させ、その結果、研究発表数は増えている。
AsianScientist - 人類は気候変動や新規感染症などの絶え間ない課題に直面し続けている。このため、世界中の国々が解決策の研究に注目している。この分野においてアジア諸国は無能ではない。国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)による2021年サイエンス・レポートによると、中国は2014年から2018年にかけて、世界の研究費のうち44%を増加させた。
1993年に最初に発行されたユネスコ・サイエンス・レポートは、世界中の科学、技術、イノベーションの進化を追跡し、記録している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの存在のために世界中のほとんどの研究発表は健康に焦点を当てているが、ユネスコ・サイエンス・レポートは、気候研究に関する研究が重要性を増していることを示している。
各国にとって、よりクリーンで環境に優しい方法の採用が急務となっている中で、科学は現在の有害な様式の代替となるものだけでなく、破壊的な自然災害や頻繁に発生するようになってきた異常気象に対する大きな回復力も提供してくれる。
地球規模では、アジアは世界中の科学とイノベーション・エコシステムにとって重要な支援者であり貢献者でもある。2011年から2019年にかけてインドの研究成長率は最も高く、インドネシアの研究発表は3倍になった。
以下にユネスコ・サイエンス・レポートから5つの重要な特徴を取り上げる。
ソリューション開発と成長促進にますます重点が置かれる中で、世界中の国々は研究投資を増やしている。 アジア諸国も例外ではない。実際のところ、韓国は世界で2番目に研究強度が高い国である。
最新のデータによると、東南アジア諸国連合(ASEAN)の複数の国は研究開発 (R&D) への投資を増やしており、マレーシアは2016年に国内総生産(GDP)の1.44%をR&D費用としている。 シンガポールもResearch Innovation and Enterprise 2025 Planの一環として今後5年間の投資を31%増加させ、R&D予算は250億シンガポールドル(約2兆円)となった。
気候変動の脅威がますます明らかになるにつれ、世界は時間と競争しつつ、 今までのやり方を補正しようとしている。このような緊急性があることから、海に浮遊するプラスチックごみへの注目が高まっていると考えられる。世界中でこの問題に関する研究が発表され、論文は2011年の46件から2019年の850件超に増加している。
インドネシア、マレーシア、タイなどのアジア諸国はプラスチックの製造・リサイクルのハブとしての役割を持つが、これらの国々も生分解性材料など持続可能な代替品に関する各国独自の研究発表を増やし、プラスチックごみの減少を目指している。事実、プラスチック代替品に関する研究発表件数は2019年の平均数の5倍以上に達している。
生産減少に加えて、他のアジア諸国は輸入制限を行い効果を出すことを望んでいる。たとえば、中国は2017年に低品質プラスチック廃棄物の輸入停止を決定した。これにより、世界のリサイクルの流れは根本的に変化している。
世界中のすべての産業と都市からの排水の約80%は前処理なしで環境に放出されており、生物多様性とグローバル・ヘルスに大きな危険をもたらしている。
幸いなことに、問題を扱う科学論文は最近増えてきている。最も顕著な増加を見せているのは中央アジアと東南アジアである。たとえば、ベトナムではこの問題を扱う論文は2012年から2015年にかけては51件だったが、2016年から2019年にかけては206件と4倍に増えている。
一方、フィリピンでは、廃水管理システムが、計画中であるスマートシティ(その名もニュー・クラーク・シティ)の開発に不可欠であると予想されている。2018年、この計画の発表があってからフィリピンの淡水管理に関する研究発表は倍増し、研究は常に進化する需要に適応していることを証明した。
デジタルテクノロジーは将来の経済競争力にとって不可欠であると考えられているため、環境にやさしい世界にするという共通の目標の他に、スマートな世界に移行するというのも流行のアジェンダの一つである。
多くの国が、新興技術の採用を促進するために制度上の仕組みを設定している。たとえば、韓国のI-Korea戦略は、政府のイノベーション主導経済政策に沿って、人工知能(AI)、ドローン、自動運転車両など新しい成長原動力となるものに焦点を当てている。
東南アジアでは、インドネシアがMaking Indonesia 4.0を開始した。これは、インダストリー4.0デジタル・トランスフォーメーションに向けたロードマップである。これらの研究を奨励し支援するためのイニシアチブも設定されている。フィリピンのSETUP 4.0は、インダストリー4.0に関連する分野で新風を吹き起こすことを目的として、零細企業および中小企業に対し最大500万フィリピンペソの融資を提供している
。日本は、DXと環境保護の実践の追求という2つのことは深く絡み合っていることを証明した。日本政府は、2017年に環境とデジタルという2つのアジェンダを持つSociety 5.0を立ち上げた。計画の一環として、都市部は、エネルギーを節約しながら住民のニーズを満たすために、柔軟で分散化された方法で供給されるエネルギーを活用したスマートシティ技術を利用する。
この2つのアジェンダにはもう1つ注目すべきことがある。それは原子力発電を削減し水素エネルギーを統合することにより、スマートシティに電力を供給することである。現在、韓国は、第3次エネルギー基本計画に沿って、原子力エネルギーの段階的廃止を補完するために水素エネルギーを開発中である。
過去5年間の世界の科学の進歩を振り返ると、世界のニーズと需要の絶え間ない流れを満たすために、研究環境は常に流動的でなければならないことがはっきりと分かる。しかし、我々が前に進むと同時にデジタル革命を推進する分野の多様性を高めることが求められており、まだまだ改善の余地がある。気候変動と経済発展を重視するアジア諸国は、価値ある研究を推進し、科学技術を利用して地球規模の問題を解決するために、常に限界に挑戦している。