台湾師範大学(National Taiwan Normal University)は注意欠陥・多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: ADHD)の患者について、自殺等による死亡リスクの相関を調査した研究の成果を発表した。8月16日付。研究論文は、米国医師会(AMA)のオープンアクセスジャーナル JAMA Network Open に掲載された。
ADHDによる死亡のリスクを調べた研究は数少ないうえ、先行研究は個別の死因に関する一貫性に欠け、死因の情報も不足していた。
今回の研究では、台湾の全人口を対象とする医療保険のデータベースを使用し、2000年~2012年に新たにADHDと診断された4歳~44歳の患者27万5,980名と、性別と年齢をマッチさせた193万1,860名の対照群を比較する後ろ向きコホート研究を行った。自殺、不慮の負傷、殺人、自然な原因による死亡率を、Cox回帰モデルを用いて分析し、ADHDと特定の死因との相関を調べた。
潜在的交絡因子を調整した結果、ADHD患者は非ADHDの人々に比べて全死因の死亡率が高かった(調整後危険比1.07、95%CI 1.00~1.17)。
要因別でみると、
― となった。自然な原因による死亡率に大きな差はなかった。
結論として、ADHD患者は非ADHDの人々に比べ、特に自殺、不慮の負傷、殺人による死亡のリスクが高かった。ただし、調査対象とした患者の大部分が若年者であったため、死亡の絶対リスクは低かった。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部