新素材で頑丈なヘルメット開発 シンガポールと仏のチーム

シンガポールとフランスのチームは、丈夫な新しいプラスチックを開発して一層頑丈な自転車用ヘルメットを設計した。重大な頭部外傷のリスクを最小限に抑えることが期待されている。

AsianScientist - より安全なサイクリングを目指して、ヘルメットは、頭部のけがを保護するために頑丈な補強が施され、新しい熱可塑性材料で鍛造(たんぞう)されるようになってきている。シンガポールとフランスのチームは、学術誌 Composites Part B: Engineering でこの研究を発表した。

ますます多くの人々が自転車に乗って街に繰り出している。それに伴い安全の確保が最重要課題となっている。たとえヘルメットを着用していても、頭部損傷は昔からすべてのサイクリストの死亡と長期障害の原因の60パーセント以上を占めてきた。

衝突時に頭部が受ける衝撃が強ければ強いほど、けがの程度はますます深刻なものになる。典型的な自転車用ヘルメットの構造は、外殻はポリカーボネートプラスチックでできた層で覆われ、材料の表面全体にエネルギーを割り、分散させるように設計されている。一方、内側のパッドは衝撃の大部分を吸収して、頭部に伝達されるエネルギーの量を最小限に抑える。

しかし、シンガポールの南洋理工大学 (NTU) のレオン・カー・ファイ (Leong Kah Fai)准教授が率いる科学者らは、衝撃エネルギーの75%が標準的なヘルメットのパッド部分に到達していることを発見した。これを改善しようと、科学者らはさらに多くのエネルギーを吸収できるヘルメットを開発した。このヘルメットは一層強い外殻を持ち、パッドを叩く力の量が減り、頭部への装着感は低い。

チームが開発した新しいヘルメットは、ポリカーボネートを使わない。その代わりフランスを拠点とするアルケマという企業によって製造されたElium®という商標名の熱可塑性樹脂を使用し、さらにカーボンファイバーで補強し、今回のヘルメットを作った。これらの素材を使うことでより硬くて壊れにくい外殻が作られただけでなく、ヘルメットは長時間の衝撃に耐えることができるようになった。

Elium®で作られた外殻は、ヘルメット全体にエネルギーを均等に放散することで、衝撃の50%以上に耐えることができた。エネルギーの35%だけがパッドに残ったことから、従来のヘルメットに比べて目覚ましい改善が見られる。

一連の安全性試験で、新しいヘルメットは、高スピードで縁石のある曲がった道路に沿って走るときに維持される力を減らすなど、さまざまな国際基準でポリカーボネートのヘルメットを上回った。研究者らは、新しいヘルメットは、致命的傷害の発生率を3%、重大な傷害の発生率を16.7%減少させることができるかもしれないという。これは、従来のヘルメットをかぶって平坦な道路で発生した傷害率の約半分である。

さらに、製造工程は比較的費用対効果が高い。 Elium®は室温では液体である。他の熱可塑性プラスチックは高熱を必要とするが、開発者は室温条件で素材を簡単に成形し、製造することができる。

チームは現在、商業化を目指し素材を別の熱可塑性繊維と組み合わせて試験を行い、サイクリストの安全性を高め、より軽いヘルメットを作成しようとしている。

「ヘルメットはけがの重症度を低下させ、死亡者数を減らすのに重要な役割を果たすと何度も証明されました。私たちのプロトタイプのヘルメットは、国際基準とされた一連の試験を受けており、従来のヘルメットと比較して、サイクリストに対し、より高い保護を与えることができると証明されています」 レオン准教授はこのように話した。