国立台湾師範大学(NTNU)の計算知能・ロボット工学研究室(CIR Lab)は、先進的な人工知能(AI)の設計・応用技術を用いて自己学習可能なロボットを実現しようとしている取り組みを紹介した。9月6日付。
同研究室は2007年に設立され、AIシステム、ニューラルネットワーク、ファジィシステム等の分野に関する研究を行っている。特に力を入れているのが、人間の実演から学習する(learning from human demonstration: LfD)ロボットシステムである。
同研究室の3人の指導教官の一人、チェンチエン・スー(Chen-Chien Hsu)教授は、従来のロボットの大部分は特定のタスクを実行するだけだったが、少量生産に適したオートメーションシステムが求められるなか、ロボットに自律的な認知能力を持たせれば、変化に自発的に対応できるようになるのではないかと考えている。
同じく指導教官のウェイイェン・ワン(Wei-Yen Wang)教授は、スマートなマシンの開発を順調に進めるには、学際的な連携が必要だと強調する。同研究室は電気工学や車両工学の研究者だけでなく、人間にできるだけ近いロボットの学習プロセスを開発するため、教育学部や芸術学部とも共同研究を実施している。
同研究室では過去3年間でLfDロボットシステムを含む19の研究プロジェクトを実施し、3,300万台湾元(約1億3000万円)の助成を受けている。特筆すべき成果としては、2018年にチップ製造業者と共に開発した世界最小のAIチップ「AI Mipy」や、2019年に発表したエンドユーザー製品向けのAI開発ボードが挙げられる。
スマートマシン開発における次の段階について、スー教授は「人間と機械が隣り合って働くことが、今後のトレンドになる。そのためにも作業環境での安全性確保が重要な課題になる。研究室の次の目標は、人間とロボットのやりとりを最適化し、生産性を高め、センサーフュージョン技術を用いて事故を防ぎ安全な協働環境を構築することだ」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部