国立台湾師範大学(NTNU)の研究チームが、緑茶から抽出したポリフェノールカテキンが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の複製を阻害し、免疫機構を強化し、急性の肺損傷を改善することを発見した。8月27日に発表した。この研究は同大学生命科学部の学部長を務めるチャン・ティン・チェン(Chiang Ting Chien)教授が主導し、研究の成果をまとめた論文は学術誌 Antioxidants に掲載された。
研究チームの発表によると、これらのカテキンは、濃度が195マイクログラム毎ミリリットル(μg/ml)以上になると、SARS-CoV-2の複製を効果的に阻害できる。これは、ウイルスの複製と感染に関わる酵素「レプリカーゼ」の働きを阻害することによるものである。さらに動物実験の結果、ポリフェノールカテキンは、肺損傷を改善し、免疫暴走(immune storm)を含むさまざまな症状を軽減することが示された。
チェン教授 は2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)のアウトブレイク発生から17年以上にわたってカテキンを研究し、ポリフェノールカテキンが抗酸化物質や抗炎症作用、抗ウイルス・抗菌作用を持つ可能性があることを発見した。
今回、研究チームは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行を受け、ポリフェノールカテキンの抗ウイルス作用を改めて検証した。チェン教授は、この物質をCOVID-19の予防や治療、医薬品開発に活用することで、開発のリスクや費用を低減し、開発期間を短縮できる可能性があると語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部