伝染リスクを意識すると、野生生物消費は減少する

疾病の伝染リスクについて市民に深く知らせることは、野生生物消費に関する行動を変えるために重要かもしれない。

AsianScientist - アジア5カ国で行われた調査から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についての意識が高まると人々は野生生物製品の消費を避ける傾向があることが分かった。Nature Ecology & Evolution誌に掲載されたこの調査結果は、消費者の行動を改善する良い介入につながり、保護と公衆衛生を同時に促進するかもしれない。

野生生物製品は世界中の様々な料理で主な材料として使用されており、伝統や文化的慣習の一部と見なされることが多い。しかし、野生生物を大量に消費すれば生物多様性に脅威を与える可能性があり、消費者の需要を無制限に満たせば種の数は減少する。

保護活動を支援することはもちろんだが、野生生物消費を減らせば、感染症の蔓延の緩和に大いに役立つだろう。歴史を振り返ると、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のようなウイルスや病原体がある時点で種の壁を越え、動物から人間へ、あるいは人間から動物へと飛び移っていた。

パンデミックが発生したとき、科学者たちは躍起になってこの病気の起源を解明しようとした。調査動物の中にはコウモリとセンザンコウが含まれていた。コウモリから人間へとウイルスが移ったらしいというニュースが広まるにつれ、ある国際チームはCOVID-19が野生生物消費に対する人々の意識に何らかの影響を及ぼしたかどうかを調査することを考えた。

香港、日本、ミャンマー、タイ、ベトナムで5,000人を対象に調査が行われ、パンデミックの前と後の野生生物製品の消費パターン、これからも野生生物製品を購入するかどうか、COVID-19に関する自身の理解について尋ねた。回答者の構成は様々であったが、COVID-19についての理解が最も深いと答えた回答者のうち、野生生物製品を購入したくないと答えた者は24%にもなった。

しかし、驚くべきことに、2つの国は反対の結果を示した。ベトナムでは、理解が深い人ほど消費が増える傾向があり、ミャンマーの回答者はこれからも野生生物製品を購入したいと答えた。

これらの調査結果は、野生生物消費に関する効果的な教育キャンペーンを設計する手がかりを与えてくれる。研究者らによると、意識や行動を変えるには、個人よりも社会的ネットワークを対象としたリスクコミュニケーションを行うと役に立つ。しかし、研究者たちは、文化的感受性その他の野生生物製品需要を高める要因を説明するには、データを基にした注意深いアプローチを取るべきであるとも警告した。

「利用可能な最高のデータと分析的アプローチに基づいて行動変容を起こす介入を行えば、野生生物消費に関する政策決定を行う際に意図しない悪影響の可能性を減らし、その政策の有効性と効率を大幅に高めることができます」と著者らは締めくくった。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る