アジア諸国、「サイレントキラー」肝臓がんに革新的な方法で挑む

患者の意識向上から医療政策の強化まで、アジア太平洋地域の国々は革新的な方法で肝臓がんに取り組んでいる。

AsianScientist - 毎年10月、肝臓がん患者とその支援者はエメラルドグリーンのリボンを身に着け、毎年80万人以上が死亡する恐ろしい病気と闘う肝臓がん啓発月間のために団結する。肝臓がんは肝細胞がん (HCC) としても知られており、がんの部位別の死亡者の中で3番目に大きな原因となっている。肝臓がんによる死亡の72%が発生しているアジア太平洋地域では特にその意味は大きい。

アジアで肝臓がんが増加しているのは、ウイルス性肝炎の発生率が高いことが一因としてある。シンガポール国立がんセンターのピアス・チョウ (Pierce Chow) 教授によると、例えばB型肝炎ウイルスの慢性感染患者は、非ウイルス感染者と比べて肝臓がんを発症するリスクが100倍も高くなる。脂肪肝疾患の増加も肝臓がんの原因となっている。

肝臓がんは診断が遅れることが多いため、「サイレントキラー」と呼ばれることもある。それでも、アジア太平洋地域の医療責任者らは、危険な状態にある患者集団での定期的なHCCサーベイランス検査、ウイルス性肝炎の全国スクリーニングプログラム、その他の革新的な戦略など、さまざまな方法で状況の改善に取り組んでいる。

タイの肝臓がん政策の改善

タイでは毎年27,000を超える肝臓がんの症例が報告されており、国内のがんの部位別で最も多く診断されている。診断サービスには格差があるため、多くの患者は進行した段階で自身の病状を知ることとなり、最後に残された利用可能な選択肢は緩和ケアということになる。これは、特に地方で起きている現象だ。地方の病院では専門医師が不足し、基本的な診断スキャンの機器も不足しているためである。

この問題に取り組むためにタイ保健省 (MoPH) は、国の国民皆保険制度(UCS) に基づく計画を構築中である。

「UCSは乳がん、結腸がん、子宮頸がんに関して地方も含め、全国でスクリーニングプログラムと治療を提供してきました」とMoPHのがんサービスプランの共同責任者であるテラチャイ・ソングキアトカウィン(Terachai Songkiatkawin) 博士は話す。

タイでは肝臓がんの年間治療費が増加しており、ソングキアトカウィン博士は、MoPHは早期の肝臓がんスクリーニングに対する一般の認識を高めるための政策の開始を目指していると強調。デジタルモニタリングツールがいつか肝臓がんに適用されれば、タイにとって未来の肝臓がんスクリーニングに導いてくれるものになる。

台湾で患者の意識を高める

台湾では肝臓病も深刻な公衆衛生問題である。成人の約15〜20%がB型肝炎ウイルスのキャリアであり、2〜5%がC型肝炎ウイルスに感染している。これらの感染症は肝臓がんにつながる可能性があるため、肝臓がんの意識向上の取り組みの主要な対象者は高いリスクを持つ人々である。

台湾の全体的な肝疾患の重荷を軽減するために、Hao Xin Gan(よい肝臓)財団をはじめとする地元のNGOは、さまざまな肝疾患に関する患者の意識向上と教育を推進している。この財団は1994年の設立以来、700以上の無料の疾病スクリーニングを実施。さらに1,000以上の肝疾患意識向上セッションを開催し、フリーダイヤルを通じて30万を超える電話相談も実施してきた。よい肝臓財団のヤン・ペイミン (Yang Pei-Ming) 教授は、これらの患者意識向上イニシアチブはすでに大きな影響を与えているとみている。

「熱心な医療への取り組みにより、(肝臓がんは)減少し、現在、主要な死因の中でも4番目となっています」とヤン教授は言う。

最近は進歩しているとはいえ、戦いは続いているとヤン教授。その一環で、台湾の教育部は、小学生に肝臓病教育を行うプログラムを間もなく開始する。 40歳以上の人なら、毎年、肝臓の超音波検査を受けることが重要となる。これは意識向上から行動への移行である。

日本では、政策と現実が合っている

日本は世界の中で肝臓がんサーベイランスのトップを走っていると考えられている。定期的な超音波検査と腫瘍マーカーアッセイ、さらにはオプションのCTとMRIスキャンにより、リスクの高い患者は早期に特定され、患者は改善される。肝臓がん患者の約62%が早期のステージAおよびBと診断され、 5年後の生存率は44%となっている。

高リスクの患者が優先される中で、日本は職場スクリーニングなどの取り組みを通じて、若く健康な集団を評価するリスク層別化戦略を採用し、がんの早期発見の割合を増やしている。それでも、肝臓専門医である金子俊博士は、国のサーベイランス戦略はまだ改善の余地があると考える。

幸いなことに、新しい診断技術と治療オプションが開発され、全国に展開されている。進化する政府の政策と熱心な医療従事者のエネルギーに支えられて、肝臓がん患者とそのリスクを持つ集団に対し、新たな希望が間近に迫っている。

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