トランスユーラシア語族、9000年前の中国に起源 Nature に学際研究発表

学際研究によると、トランスユーラシア語族の始まりは約9000年前中国の初期の農民のグループであり、そこから広まったとされている。

AsianScientist - 母親を意味する 「Mother」「mama」「madre」「am'mā」 などといった語がある。なぜいくつかの語が異なる言語でほとんど同じように聞こえるのか疑問に思ったことはないだろうか? それは、言語は、いくつかの点で遺伝的特性のような特徴を持つためである。言語は人とともに移動し、人類の歴史を追ってたどることができ、同じ背景を持つため、共通の特徴を共有する。

そのような言語語族の1つとして、現代の日本語、韓国語、ツングース語、モンゴル語、およびチュルク語を含むトランスユーラシア語族がある。現在、ユーラシア大陸全体で見られるトランスユーラシア語族は、最も広く分布している言語族の1つであるが、正確にはどこから来て、どのように広まったかは、研究者が長年議論してきた謎である。

科学誌 Nature で、ある学際研究が発表された。それによると、トランスユーラシア語族の共通の起源は約9000年前に中国で発生した可能性があり、農業がその広がりを進めていったとしている。

トランスユーラシア語族がどのように始まったのかという質問に答えるために、ドイツのマックスプランク人類歴史科学研究所(Max Planck Institute for the Science of Human History)のマーティン・ロベーツ (Martine Robbeets) 氏 が率いる研究チームは、言語学、考古学、遺伝学の3つの分野を組み合わせた。

チームは、98のトランスユーラシア語の語彙概念を使用した。北東アジアの新石器時代から青銅器時代の遺跡のデータベースと、古代韓国と日本に住んでいた23人分の古代ゲノムを使い、この地域の言語、農業、遺伝的拡大のパターンを追跡した。3つのデータセットを分析したところ、トランスユーラシア語の共通の起源と一次分散は、中国東北部の遼渓谷に約9000年前に住んでいた初期のキビ農家までたどることができると明らかになった。農家の子孫が北東アジアを横切って移動するにつれて言語も移動していった。それを北と西に移動したものはシベリアとステップ地域に、東に移動したものは韓国と日本に広がっていった。

「以前のいくつかの研究は、トランスユーラシア語族の分布は農業地域を超えていると考えていましたが、私たちの研究から、農業分布仮説が、やはりユーラシアの人口分散を理解するための重要なモデルであることが確認されました」と研究者は書いている。

このような調査結果は、言語族が東部のステップから移動するにつれて牧畜遊牧民によって広められたと提案した「牧畜仮説」と異なるものである。

言語の移動が農業と遺伝の分散を反映しているというロベーツ氏の異なる発見は、世界最大の言語族の1つの始まりと分布について新しい「農業仮説」を示すものである。

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