SNSのリアルタイムの会話データを利用すると、異常気象であっても命を救うことのできる情報が提供可能である。
AsianScientist - SNSは有名人のゴシップやレシピのアイディアであふれかえっているが、自然災害と人為災害の両方に関するリアルタイム情報の驚くべき情報源ともなっている。 実際のところ、フィリピンでは、台風の救援活動はフェイスブックやツイッターなどのSNSを通じて行われている。
水位上昇から命取りの台風まで、専門家は長い間、アジアの沿岸地域は気候変動と異常気象によって最悪の打撃を受けるだろうと語ってきた。また、気象事象であってもそれ以外の事象であっても、テクノロジーに精通したコミュニティは、起こっていることについて話し合う前も、その最中も、その後もすぐにSNSに向かう。 会話がリアルタイムのソーシャルデータの宝庫であることに気が付いたツイッター(Twitter) の開発者らは、一度につき280文字という制限の中で、直ちに現場の状況について警報を発して更新、支援し、評価をするために利用した。
開発者らは、パブリック・アプリケーションプログラミングインターフェイス (API) を介してツイッターのデータにアクセスし、ユーザーが次から次へと寄せる稿の中から貴重な情報を引き出すためのアプリやツールを構築して、更新を迅速に、支援対応はさらに迅速なものにしている。
インドネシアの洪水、日本の台風、さらにはオーストラリアの山火事が起こった時、異常気象がコミュニティを荒廃させる中でも、SNSのユーザーは立ち上がって呼び掛け、情報を発信し続けた。
このような異常気象に対し、インドネシアの災害救援財団であるPeta Bencanaは、ツイッター社 と協力して、災害に関する情報をリアルタイムで表示するデジタルツールを開発した。
2020年1月、インドネシアのジャカルタでは記録的な降雨に見舞われた。その結果、市内の広い地域で洪水が発生し、数十人が負傷し、数千人が避難した。洪水発生の最初の週に、災害に関する2万件以上のツイートがあった。
Peta Bencanaはこの膨大な量のSNSデータを活用して、同財団のアカウントに寄せられたものの中でインドネシア語で洪水を意味する『banjir』などのキーワードを含むツイートを追跡するボットを開発した。
追跡後、ボットは洪水マップを作り上げる観測値の共有方法に関する指示に自動的に応答する。洪水がピークに達したとき、住民たちは洪水地域を避けて安全な決定を下すために地図をチェックし、25万9,000回以上のアクセスがあった。
同様に、日本では、ツイッター社 のパートナーであるJX通信社がプラットフォームのソーシャルデータを使用して迅速な更新を行い、ハギビスの状況を効果的に判断した。ハギビスは2019年に24時間で3フィート(約900ミリメートル)の雨を降らせ、74人の命を奪った台風である。
リアルタイムのデータにアクセスできるため、政府や災害救援組織は災害時に効果的に情報を収集し発表することができるだけでなく、データを分析して人々がどのような影響を受けているかを知ることができる。
SNSから引き出されたデータは異常気象や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような世界的な緊急事態に使用され、当局がその事象に関する状況、認識、議論の進展を監視するのに役立つ。さらに重要なことに、データが迅速に利用されれば更新と支援も迅速になり、自然災害によって引き起こされる被害を軽減するのに役立つ。
「ツイッター社が始めたユニークなサービスは、危機の際に情報を共有し交換するために世界中の人々によって使用されてきました」
ツイッター社アジア太平洋地域公共政策慈善事業部門のシニアディレクターであるキャサリーン・リーン (Kathleen Reen) 氏はこのように振り返り、次のように締めくくった。
「私たちは、特に人々が自然災害の際に必要な情報を見つけられるようにする責任を認識しており、信頼できるメディア、政府機関、救援団体、ボランティア団体からの信頼性のある情報の拡大に取り組んできました」