民主主義サミットに対する南アジアと日本の見解分析 カーネギー国際平和基金

カーネギー国際平和基金(Carnegie Endowment for International Peace)は、バイデン大統領が開催予定の「民主主義サミット(Summit for Democracy)」に対する各地域の見解をまとめた。2021年12月6日付。

南アジアと日本に関する概要は以下の通り。

● 南アジア

バイデン政権は権威主義勢力に対抗して民主主義政府連帯を確立するという意思を表明したが、南アジアでは次のような理由から懐疑的な意見が多い。

1)米国はまず、自国内の民主主義の危機に対処すべきである。フリーダム・ハウス(Freedom House)が毎年発表している国ごとの自由度スコアでも米国のスコアは大きく低下しており、南アジア諸国は、民主主義のリーダーとしての米国の立場を疑問視している。

2)バイデン政権は、インドと米国の二国間関係の基盤に民主主義的価値観があると主張するが、モディ・インド首相のヒンドゥー至上主義によりインドの民主主義が損なわれていることについては沈黙している。

3)招待国の選択基準には、民主主義的価値観よりも、戦略上の利害が関係しているように思われる。例えばパキスタンを招待したのはテロ対策での協力を目的としたものと思われるが、民主主義国を集結して権威主義に対抗するというサミットの目的と矛盾する。

バイデン政権が南アジアの民主主義の復興を真剣に考えるなら、カシミール問題を含むインドの民主主義の後退と人権侵害に向き合う必要がある。また、今後の民主主義関連の会合にはバングラデシュとスリランカを招待し、両国の民主改革を前進させるべきである。

● 日本

「自由で開かれたインド太平洋(Free and Open Indo-Pacific:FOIP)」構想を支持する日本は、サミット開催を歓迎しているものの、アジア諸国の一部が招待されなかったことについては慎重な対応が必要であると考えている。

日本がこのサミットを有益なものとするには、1)非招待国を含むリモート会議の開催、2)民主主義的の保護に向けた多国間アプローチを話し合うためのアジア諸国のフォーラムの設立、といった行動が必要になる。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る