台湾大学(NTU)は、同大学の海洋学者が、クロマグロ(Bluefin Tuna)の体内に蓄積された水銀量が、世界の海洋の水銀汚染と生物学的利用率(bioavailability)の指標になることを示したと発表した。「NTU HIGHLIGHTS 87」(2021年12月号)で紹介された。本研究の成果は科学誌Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America:PNAS(全米科学アカデミー紀要)に掲載された。
捕食者であり広範囲を回遊するクロマグロは、神経毒性を有するメチル水銀(MeHg)を体内に蓄積することで知られている。
NTUのチュンマオ・ツェン(Chun-Mao Tseng)教授が率いる「水銀研究チーム」は、クロマグロの水銀蓄積率(mercury accumulation rate: MAR)には集団によって大きなばらつきがあることを示した。
各クロマグロ集団のMARは地中海、北太平洋、インド洋、北大西洋の順に高かった。さらに、観察されたMARのパターンは、自然及び人為的な水銀排出と密接に関連する各海域のMeHg濃度に対応していた。総じて、クロマグロやその他の広域に分布する海水魚における水銀の生物蓄積は、地球規模の水銀汚染を調査するための手掛かりになり得るという。
論文の査読者は「本論文は『マグロの水銀蓄積と海水中の水銀量には相関があるのか』という50年来の疑問に答えるものであり、海洋の水銀循環を理解するうえでの大きな進歩である」と研究の意義を高く評価した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部