オゾン汚染は東アジアにおいて、小麦、コメ、トウモロコシの年間収穫量を減少させており、年間約630億ドルの作物生産損失につながっている。
AsianScientist - 大気のオゾン層は有害な紫外線から地球を保護するが、地表全体のオゾン濃度が高いと、食料保障が脅かされる。Nature Food 誌に掲載された調査によると、東アジアではオゾン汚染の増加により主要な主食作物の収穫量が減少し、年間600億ドルを超える農業損失が発生している。
主食作物は、アジアの食料保障と経済にとって極めて重要である。2014年から2018年にかけて、この地域は世界のコメの約90%、トウモロコシの32%、小麦の44%を生産した。アジア全域で産業育成が激化しているため、この地域は地表オゾン汚染がひどくなっている。
オゾン濃度が常に高いと温室効果ガスの働きをして地球温暖化の原因となり、作物の成長を妨げる。しかし、今までの研究は、アジアの作物遺伝学や環境条件に固有ではない特性を使用していたため、アジア全体を正確に評価してはいなかった。また、直接測定ではなく、地上オゾン濃度を利用していた。
中国・南京信息工程大学のフェング・ジャオジョング (Feng Zhaozhong) 博士が率いる国際チームは、オゾン曝露がアジアの作物生産に与える影響をより正確に理解するために、地域全体の主要な農場の小麦、トウモロコシ、米の収量とオゾン曝露の関係に関する実験データを調査した。
チームは、中国、日本、韓国に設置した3,000以上のモニタリング地点から6カ月にわたり、毎日12時間地表オゾン濃度を記録した。次に、これらの地点のオゾン濃度が40 ppb(大気の質を測定し、植生を保護するために欧州連合が定めたしきい値)を超えているかどうかを評価した。
作物損失の数値が最も高かったのは中国であり、小麦が33%、コメが23%、トウモロコシが9%であった。そして、オゾン汚染による東アジアの年間総経済損失は630億ドルであるという結論が出た。そのうち300億ドル以上は、コメの生産量の減少によるものだ。
この驚くべき結果を踏まえ、チームは作物の損失を定量化し、南アジアと東南アジアという他の場所でも大気汚染を減らすことによる利益を評価する必要性を強調した。地域全体で地表オゾンのモニタリングネットワークと排出に関する厳格な政策を作れば、オゾン曝露と食糧不足という迫り来る脅威を緩和するのに役に立つ。
チームは「汚染を防止すれば、作物の生産と品質が向上し、かなりの利益が生まれるでしょう」と締めくくった。