ゲノム解析で細菌の種複合体の分泌装置の進化過程を解明 台湾・中央研究院

台湾の中央研究院(Academia Sinica)は1月24日、同院の研究者らが、種複合体(species complex)に含まれる種間の違いを説明するゲノム解析手法を開発したと発表した。この研究の成果は学術誌 BMC Biology に掲載された。

現在の細菌分類学で定義された種(species)名の多くは、種複合体(species complexes)に対応している。種複合体に含まれる種の境界や種の間の関係はあいまいであり、こうしたあいまいさは研究の妨げとなるだけでなく、病原体の同定や検疫に関する規制の方針決定にも影響を及ぼしている。

中央研究院のチーホン・クオ(Chih-Horng Kuo)博士が率いる研究チームはこの問題に対処するため、植物への病原性を持つアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)という細菌の種複合体のシステムを用いてゲノム解析の戦略を開発し、分泌装置の進化と病原性プラスミドについて研究した。

研究の結果、ゲノム解析により、DNA配列に基づいて種複合体内の種同士の境界を明確に決定できることが明らかになった。また、この細菌の分泌装置が経た複雑な進化の過程により、エフェクター(effector)や関連する遺伝子の多様性が形作られたことが分かった。植物に対する病原性の菌株間での違いは、この複雑な進化過程と遺伝子の多様性により説明できる可能性がある。今回の研究で開発されたゲノム解析戦略は、他の細菌の種複合体にも応用できるとしている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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