台湾の陽明交通大学(NYCU)は2月21日、同大学の研究チームが、磁性-プラズモンナノ粒子(magneto-plasmonic nanoparticle)とレーザービームを組み合わせ、表面増強ラマン散乱(surface-enhanced Raman scattering)を利用して化粧品に含まれる微量の水銀を測定できる方法を開発したと発表した。
この研究の成果は光電センシング分野の著名学術誌 Sensors and Actuators B: Chemical に掲載された。
台湾食品医薬品局(Taiwan Food and Drug Administration)は、自然残留(natural residue)を除き、重金属である水銀を化粧品に加えてはならないと規定している。しかし、水銀にはメラニンの生成を抑制する作用があることから、美白効果をうたう一部の化粧品には水銀が添加されている。
(提供:NYCU)
そこでスロジット・チャトパディヤイ(Surojit Chattopadhyay)教授らは、酸化鉄(ferric oxide)ナノ粒子の表面を銀の層で覆い、磁石を用いて酸化鉄を集合させた。これによりラマン分光法の信号を増幅するホットスポット効果を生み出すことに成功し、ラマン分光法を物質解析に用いる際の課題である散乱による信号の弱さを克服した。
開発された手法により、美白化粧品に残留する水銀(Hg+)を、濃度0.2 ppbを限界値として検出できることが確認された。この限界値は、台湾の法的規制で定められている自然残留の基準値1 ppmを大きく下回る。
これまでも表面増強ラマン散乱の産業応用に向けたナノ基板に関する研究は盛んに行われてきた。今回の研究の成果により、ラマン信号を増強し、化粧品の水銀検出に利用できるナノ粒子の種類が明らかになった。今後の商用化に向けては、金属ナノ粒子の構造を安定して制御し、繰り返し使用できる基板を開発することが課題となる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部